親の介護・見送り・相続や夫婦の年金・住まい、子どもの将来まで、頭の痛い問題が山積みになる定年前後。加えて、昨今の物価高や不透明な年金、複雑化する相続制度に悩まされている人も多いだろう。
ここでは、FP(ファイナンシャルプランナー)として活躍する経済エッセイストの井戸美枝氏が、老親のトラブル事例と解決法、年金の増やし方などを綴った著書『親の終活 夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)より一部を抜粋。「親の就活」への備え方について紹介する。(全2回の1回目/2回目に続く)
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「親の困りごと」を段階的にクリアする
新型コロナが長引き、この間、帰省できずに親やきょうだいと、なかなか顔を合わせられなかった人も多かったと思います。
年末年始やお盆などの大型連休で久しぶりに家族が集まるときに、終活や相続の話を一気に進めたくなってしまいますが、久しぶりに会う親たちに向かって「終活」「相続」というワードは禁句です。「自分たちが死ねばいいと思っているのか」と不快な気持ちにさせてしまうこともあります。
はやる気持ちを抑えて「コロナが落ち着いたらやってみたいこと」「旅行に行きたいところはないか」といった話をしながら、親の話にゆっくりと耳を傾けてみましょう。
今、どんな持病を抱えていて、どこのクリニックがかかりつけ医なのか。まずは、親の体調面を気遣いながら、話を進めると親の状況を把握できるようになります。
一度の帰省ですべてを聞き出そうとしないで、何回も実家に顔を出しながら、「親の困りごと」をひとつずつクリアしていきましょう。
例えば、新型コロナに感染したときなど、病気で倒れたらきょうだいの誰が「キーパーソン」になるのか。
私の場合、父が倒れたときは母がまだ元気でしたので、父の身の回りの世話や入院時の手続きなどは母が行いました。父が他界して、母が入院するときは、誰が入院時の手続きをして主治医の話を聞くのか。今はきょうだい間で、SNSなどでつながっておくことができますので、普段からトークルームで「連絡網」を作っておくと、“もしも”のときでも連携して対応できます。