親の介護・見送り・相続や夫婦の年金・住まい、子どもの将来まで、頭の痛い問題が山積みになる定年前後。加えて、昨今の物価高や不透明な年金、複雑化する相続制度に悩まされている人も多いだろう。
ここでは、FP(ファイナンシャルプランナー)として活躍する経済エッセイストの井戸美枝氏が、老親のトラブル事例と解決法、年金の増やし方などを綴った著書『親の終活 夫婦の老活 インフレに負けない「安心家計術」』(朝日新書)より一部を抜粋。「親の介護」にまつわるお金事情ついて紹介する。(全2回の2回目/1回目を読む)
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介護にかかるお金の平均額は約580万円
介護にはさまざまなお金がかかります。
生命保険文化センターが行った調査で、過去3年間に介護経験がある人に、どのくらい介護費用がかかったのかを聞いたところ、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)は、住宅改造や介護用ベッドの購入費など一時的な費用の合計が平均74万円、月々の費用が平均8.3万円となっています。
なお、介護を行った場所別に介護費用(月額)をみると、在宅では平均4.8万円、施設では平均12.2万円となっています。介護を行った期間(現在介護を行っている人は、介護を始めてからの経過期間)は平均61.1カ月(5年1カ月)です。4年を超えて介護した人も約5割となっています。
総費用は一般的な費用と期間から算出すると約580万円です。平均額なのでこれよりももっとかかる人もいれば、少なく収まる人もいます。
母(妻)1人になれば年金額は激減する
要介護1~2ぐらいまでは在宅で介護をするほうが費用は抑えやすいものの、要介護3~5は介護施設に入居したほうが、安心した生活を送れることが考えられます。
親を介護する場合、介護費用は親のお金で支払うのが基本です。子どもにはそれぞれの生活があり、教育費や住宅ローンがやっと終わったばかり、という人もいるでしょう。これから準備しなければならないのは、自分たちの「老後資金」なので、親の介護費用を代わりに払ってしまうと、自分たちの退職後の生活が大変なことになってしまいます。
親の年金収入を聞いておき、介護費用は収入の範囲内に収まるのか、確認しておくことが大事です。
問題なのは父が他界した後、母がおひとりさまになって介護状態になったとき。
両親が健在のときは2人合わせて年金収入は月30万円程度あったとしても、母ひとりになったら10万円ぐらいになってしまったということもありえます。
母親世代は厚生年金の加入歴がない人が多いので、年金収入は「老齢基礎年金」と「遺族厚生年金」しかない、というケースがほとんどです。お母さんは「お父さんの年金をそっくり受け取れるから大丈夫」と思い込んでいませんか?
両親が健在なときから、父が亡くなった後、母が受け取る年金額はどのくらいなのか、確認しておきましょう。