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代役を考えたプロデューサーの英断

「特にじいじ(注:市川猿翁)と猿之助さんに憧れていて、今はとにかくその背中を追いかけていきたいという思いです」

 そんな團子の実力について、前出の村上氏は次のように解説する。

團子(Instagramより)

「文字通り、今回の代役は“大抜擢”です。團子さんは名家の生まれで舞台の経験が何度もあるといっても、今回のような膨大な台詞がある役は未経験。普通は19歳という年齢で、これほどの大作の主役を張るというのはできません。この代役を考えたプロデューサーの英断には感動すら覚えます。

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 しかも、一般演劇ならセリフさえ覚えれば、演じる事だけは何とかなるかもしれませんが、歌舞伎では大立ち回りや宙乗りなど体を使った演技も求められます。さらに、今回の演目は宝塚の演出家・植田紳爾さんの作品で、歌と踊りの要素もありますから、難易度は更に高い。役者として本質的な力がないと演じきれなかったでしょう」

才能の片鱗を見せた2020年の舞台

 今回の大抜擢によって一躍脚光を浴びることになった團子だが、その才能の片鱗は以前から垣間見えていたという。村上氏が2020年の舞台を振り返る。

襲名披露での集合写真 ©文藝春秋

「『義経千本桜 川連法眼館』で駿河次郎を演じた時のことです。この役はわき役で、しっかり型通りに演じなければなりません。團子さんは骨法を守り、しかもその演じ方が心地よかった。歌舞伎は古典芸能ですから、新作をやるにしても義太夫や舞踊といった基礎が出来ていないといけません。彼は古典を演じる背骨がしっかりしているのだなと感心したのを覚えています」

 このように、幼い頃から歌舞伎の世界にどっぷりと浸かり、英才教育のなかで着実に実力をつけてきたことが今回の代役の成功につながったのだろう。