黒川巡査が小隊長についた“嘘”
「小隊長が『なぜここにいるのか』と問い質したところ、黒川巡査は『(本来の隊員が)トイレに行きたいというので代わった』等と、しどろもどろになりながら答えたそうです」(同前)
だが、その説明は嘘だった。警備部幹部が続ける。
「その場を任されていた隊員は、トイレではなく警備車両の中でサボっていただけだったのです。黒川巡査とその隊員は機動隊の着隊が同期で、警察学校の初任科でも同期だったそう。それだけに、気心が知れた仲だったのか、いいように使われていたのか……」
その後、黒川巡査は小隊長から注意を受け、落胆しつつ同期の隊員と共に西門守衛所のトイレへと向かったのである。
「ミスばかりする自分が情けない」
「午前4時半頃、ある隊員が用を足そうとトイレに行くと、2つある個室の両方が使用中だった。仕方なく外で待っていたところ中から“パンッ”という発砲音が聞こえ、大騒ぎになったのです」(同前)
黒川巡査は何故、自らの命を絶ってしまったのか。前出の機動隊関係者が語る。
「実は、黒川巡査は以前から精神的に不安定なところがあり、医師からうつ病と診断されて自宅療養をしていた時期があったんです」
さらに、2年程前にはこんな悩みも吐露していた。
「ミスばかりする自分が情けない。拳銃を持ってトイレに行くと、引き金を引いてしまいそうで不安な気持ちになるんだ……」
自宅療養をしていた黒川巡査に復職の許可が出たのは昨年4月。半年ほどの“ならし勤務”の後、11月から現場に復帰していた。
だが、こうした勤務体制に問題はなかったのだろうか。元警視庁警備部特殊部隊の隊員で、危機管理アドバイザーの伊藤鋼一氏はこう指摘する。
「たとえ医者の許可が出ていたとしても、精神的に不安定な要素を抱える警察官を、国家の中枢で働かせるのはいかがなものか。病状の変化によっては、その銃口が他人に向かうことも考えられます。警備のあり方はもちろんのこと、メンタルケアを含めた体制の見直しが必要でしょう」
黒川巡査の父親は、こう言って肩を落とした。