群馬県の山本一太知事は、26日の県議会でアンテナショップ「ぐんまちゃん家」閉店にまつわるトラブルについて答弁した。

 店舗の運営を委任していた「田園プラザ川場」との間に、齟齬の生じたことを認めつつ、「県として後ろめたいことは一切ない」と県側に非のないことを繰り返し強調した。

 ついに県政のど真ん中で議論されるに至った「ぐんまちゃん家」閉店のいざこざ。委託業者は何を主張し、県はそれにどう応じたのか。すれ違いのプロセスを詳報した当時の記事を再公開する。(初出:2023年5月10日。年齢・肩書は当時のまま)

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「今回の件は5000万円でどうにかして欲しい」

 突然押しかけてきた宇留賀敬一群馬県副知事は、こう迫ってきたという。

 永井彰一は余りに唐突な話に戸惑い押し黙った。一体5000万円とはいかなる趣旨の金額なのか、それさえもわからなかった。宇留賀はこの5000万円が解決金であるとほのめかし、「県に支払いの義務はないし、法的にも根拠のあるお金ではない」と説明。さらにこう続けたという。

「したがって、後日、オンブズマンなどの第三者から指摘を受け、県側が訴訟で敗訴した場合は返還してもらわねばならないが、自分としてのできる限りの誠意がこれだ」(全2回の2回目/最初から読む

宙に浮く“5000万円”

 同席していた「田プラ」幹部が語気を強めた。

「そんな血まみれのお金をどうして受け取れるか? 『ぐんまちゃん家』は県側の要請があって受託した業務だ。だから長期的な投資もし、社員も雇用した。撤退となれば社員らの行き先、また原状復帰の資金、投資の回収などについて話し合いをしたいと言っているだけだ。あなたはなにか勘違いしている」

 にわかに信じられない。県政の長に近い人間がそうした類の大金を非公式に提示するなど驚天動地の話だ。

宇留賀敬一副知事(左) Ⓒ産経新聞

 この“宇留賀事件”から数日後、「田プラ」に対して県側は「今後は代理人を通してやりとりしてほしい」と一方的に通告してきたという。「田プラ」側もやむなく代理人弁護士を立て、「ぐんまちゃん家」撤退にかかる諸経費についての協議を求めざるを得なくなった。

【再現】5000万円の件についてのやり取り

 2022年9月12日、「田プラ」の幹部2人が群馬県の代理人弁護士を群馬県前橋市に訪ねた。その一部、県側が否定している宇留賀副知事が提示した5000万円の件についてこんなやり取りがあった。

「田プラ」側

 既に代理人同士の応酬になっている状況下にもかかわらずに当事者である自分達と面会の機会を設定していただいたことについて感謝申し上げる。まず今回の要望書、回答書に関して、これらの書面に先立つ5月23日に宇留賀副知事が田プラに訪問されて5000万円を支払うという話があったことを先生自身はご存知か?

 

「群馬県代理人弁護士」(以下、群馬県)

 初耳。ただ5000万円というキーワードで思い出したが、賃貸人(筆者注:「県」のこと)に対する原状回復債務を田プラが引き受けた上で、1階部分の原状回復費用見合いとして相応額の全額を支払うというような話題が自分と県庁側との協議の席でなされたことがあった。

 

「田プラ」側

 当時の副知事の発言によれば、田プラへの訪問前に相談した顧問弁護士からも猛反対されたが、話を収めるために訴訟リスク覚悟で金の算段をつけたかのような言いぶりだった。その際の「顧問弁護士」というのは先生ではないのか?

 

「群馬県」

 自分ではない。原状回復債務を田プラに移転して、原状回復代金として5000万円が県から田プラに支払われるスキームを採るとしても、その前提をして1階部分の資産(県所有物)を田プラに移転する必要があり、5000万円でケリをつけようとする県が想定するスキームは非現実的であるように思う。