群馬県の山本一太知事は、26日の県議会でアンテナショップ「ぐんまちゃん家」閉店にまつわるトラブルについて答弁した。
店舗の運営を委任していた「田園プラザ川場」との間に、齟齬の生じたことを認めつつ、「県として後ろめたいことは一切ない」と県側に非のないことを繰り返し強調した。
ついに県政のど真ん中で議論されるに至った「ぐんまちゃん家」閉店のいざこざ。委託業者は何を主張し、県はそれにどう応じたのか。すれ違いのプロセスを詳報した当時の記事を再公開する。(初出:2023年5月10日。年齢・肩書は当時のまま)
◆◆◆
首相・岸田文雄の一日の行動を伝える「首相動静」。2023年1月16日の午後6時の欄には、日本歯科医師連盟の会長らと会食、場所は「銀座つる」と記されていた。
東京・銀座7丁目のありふれたビルの2階にある料理店は、群馬県のアンテナショップとして群馬県から委託を受けた「田園プラザ川場」(本社、群馬県利根郡川場村)が営業する店である。(全2回の1回目/続きを読む)
政界の大物が集う、群馬県のアンテナショップが営業する料理店「銀座つる」
ミシュランの星を取るような店ではないし、料亭のような格式があるわけでもないこの店の名前を聞いてピンときた人間は、かなりの政界通といえる。店の常連は自民党の幹部・二階俊博率いる二階派の面々であり、群馬県選出の衆議院議員・小渕優子や元経産相の梶山弘志なども会合に使う。政治家ではないが、70歳を越えても尚、自民党の事務総長であり続ける“陰の幹事長”とも呼ばれる元宿仁という大物も常連客の1人である。
なぜこれほどまでに有力政治家が集まるのか? その秘密については後ほど詳細に伝えたい。
時の首相が顔を見せ、有力政治家たちが足繁く通う店。その一方で、店の下、つまり1階に目を移すとそこはガランとして寒々しい空間が広がっている。目を凝らして中を覗くと、群馬県高崎名物の“だるま”や売れ残った商品がダンボールに詰められているようだ。ここには2022年末まで上階の店「つる」同様に「田園プラザ川場」(以下、田プラ)が群馬県から委託を受け経営していた群馬県のアンテナショップ「ぐんまちゃん家」が入っていたのである。
実は現在、アンテナショップを委託された「田プラ」と委託した群馬県の双方が代理人弁護士を立てる騒動に発展している。争いの種は「ぐんまちゃん家」の閉店をめぐるゴタゴタだ。そもそもの原因を探っていくと群馬県政界を取り巻く人脈にたどり着くのだが、騒動を紐解くために、まずは地方創生の聖地とも言われる「道の駅」の物語から始めねばならない。
地方創生の聖地となった、群馬県・道の駅「川場田園プラザ」
群馬県利根郡川場村――。赤城山山麓に広がる人口およそ3200人の小さな村だ。そこに、「田プラ」の経営する道の駅「川場田園プラザ」があり、毎年、約3000人の小さな村に全国から200万人がやってくる。昨年の売上高はおよそ18億円にのぼった。
70%はリピーターの客だという。つまり、それだけ「田プラ」が提供するサービスの“質”が評価されているということになる。しかし1998年、村の第三セクターとして開業した「田プラ」が当初から集客力のある稼げる施設だったわけではない。むしろ、第三セクターの悪い面――競争意識がない、最後は村や県が救ってくれるだろう、という無責任体質が災いし、赤字を積み重ねていた。