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「田プラ」の言い分に、群馬県はどう答えるのか。群馬県庁の観光課の職員2名と、県の代理人弁護士が面会で取材に応じた。

――「田プラ」は中途での事業中止ならば事前に書面で通知を行うべきだったと主張しているがどうか。

「『田プラ』には面談に先立つ1年前、2021年2月頃に『ぐんまちゃん家』の閉鎖は伝えた。永井社長のお返事は『応じられない』というものだったのは事実。その後、社長から『投資分の補償はできないのか』とご要望もあった。その点でも『田プラ』が『ぐんまちゃん家』閉鎖を寝耳に水のように言うのは事実と異なる。以降の2年あまりにわたる県と『田プラ』の交渉はすべて撤退を前提になされたものだと認識している。

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 2022年12月を以て営業を終了したのは、『ぐんまちゃん家』が賃貸物件に入居していた施設のために、契約終了となる2023年3月までに原状回復して引き渡さなければならなかったからだ。業者には工事に2カ月半はかかると言われたので、契約満了の期日を逆算して営業を止めたまで。

 県の認識としては、『田プラ』側との業務委託契約は契約書に記されたとおりの内容、期間で契約満了であると考えている。契約破棄だとは認識していない。『田プラ』にとって満足いく回答ではなかったかもしれないが、前述のとおり撤退を前提にした交渉を続けてきた。しぶしぶながら原状回復工事にもご理解いただいたものと思っている」

――2022年5月、宇留賀副知事が面談の場で「5000万円」という金額を提示したと聞いている。

「2022年5月に副知事が『田プラ』を訪れた際には、さまざまなスキームのもとで撤退の道が探れるだろうと申し上げた。その中で、工事費用、家賃等々を含めてざっくり5000万円という数字が出たことはあった。撤退に関しては『田プラ』からは『1億数千万円くらい出せないのか』とも言われていた。『田プラ』側が必然的に負うであろう金銭的負担、たとえば工事費、家賃補償等に関し、共同で事業を営んでいた県としては何かできることはないかと模索はした。だが『ぐんまちゃん家』撤退は契約に違背するものではないので、最終的には補償や解決金といった特別なスキームを用いて金銭を支払っていない」

――法的な認識については理解したが、県内企業とこれほどの行き違いが生じたことに関してはどうか。

「『田プラ』側が県から『なにもしてもらっていない』と考えていることは十分理解できる。交渉の場で県側から金銭的な補償があり得るかのように思わせてしまったのは軽率だった。お怒りも無理からぬことだと思う。先方から要求、要望があれば誠意をもって対応していきたいと思っている」

 これが群馬県のアンテナショップ閉鎖にまつわる双方の認識だ。本来ならば手を取り合って群馬県の発展のために協力していけたはずの両者がかくもこじれた理由はなにか。

 山本一太知事と永井彰一の感情的なしこりか。事情を斟酌し軽率にも「5000万円」を口にした宇留賀敬一副知事の無分別か。あるいはその両方か。

料理屋「つる」に寄せた自民の大物・元宿の郷土愛

 第1回の冒頭に記した「田プラ」が経営する料理屋「つる」に二階派の重鎮や政界の面々がなぜ集まるようになったかの謎解きをせねばならない。まず「田プラ」社長・永井彰一の父である鶴二が川場村村長、県会議員だったとはいえ、福田派のオーナー福田赳夫の寵愛を受け、清和会の人脈がその息子彰一に受け継がれたことを確認しておこう。

 そして、冒頭にも記した自民党事務総長で“陰の幹事長”とも言われる大物・元宿が実は川場村出身なのだ。最初に二階を「つる」に連れてきたのは元宿だった。非常に郷土愛が強く、幼い時から鶴二に可愛がられていた元宿は、恩返しのようにこの店に通っている。二階もこの店を気に入った。そして、いつの間にか永田町でも知る人ぞ知る、二階派の“社交場”とも呼ばれる店になっていったのだ。

田園プラザ川場

 群馬県知事の山本はかつて激怒し、訴訟にすると息巻いたことがあった。それはブランド総合研究所が発表した「地域ブランド調査2021」に対してだった。地域のブランド力がどれほどあるかという調査で、群馬県は47都道府県の中で44番目にランクされたのだ。この結果に対し、山本は「不当だ」と息巻き、「法的な措置も考える」などと口走った。

山本一太 Ⓒ時事通信

 群馬県のブランド力、イメージを引き上げたい――知事であれば当然の願いであろう。ならば、地方創生のモデルとして全国に名を轟かせた彰一率いる「田プラ」をこそ大事にするべきだったのではないか。

 足下のごたごたひとつ片づけられないようでは、県全体のイメージアップなど程遠かろう。今こそリーダーシップを発揮してはどうか。