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 どこをとってもリアルで、その1つ1つから役の心情や人格さえ見えてくる。人を殺してしまった動揺や、世の中に自分の居場所がないと感じてしまう切なさ、でも本当に自分が悪いのかという怒り……それらをすべて深津さんにぶつける「孤独で可哀想な男」の内面が、あのシーンで浮かび上がるんです。

 普段の爽やかな魅力を全部そぎ落として、弱くて情けない男性にしか見えない姿も目が離せません。

鈴木亮平・宮沢氷魚 『エゴイスト』(2023)

(左)鈴木亮平(右)宮沢氷魚

「ゲイの当事者から見てもリアルすぎる」と話題になった『エゴイスト』。私も、鈴木くんと宮沢くんのセックスシーンはこれまでにないくらい自然で、とても丁寧に描かれているなと思いました。

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「世界でもここまでの再現は初めてなんじゃないかと思います」

 ただあえて言いたいのは、2人のセックスシーンは「すごい」というよりも「ゲイのセックスは確かにこうなんだろうな」と納得する感じで、むしろ「普通なことがすごい」んですよね。

鈴木亮平と宮沢氷魚がゲイカップルを演じた「エゴイスト」 映画予告PVより

 2人ともバラエティ番組などで誇張されたオネエ的なゲイではなく、本当にどこにでもいそうなゲイに見えて、だからこそあんなに自然にセックスが始まるし、どちらが攻め役でどちらが受け役かを察する自然さも素晴らしい。そのシーン専門の演技指導者さんが入ったと後で聞いて、すごく納得しました。

 世界でも、ここまでゲイのセックスを再現できている映画は初めてなんじゃないかと思います。まだ上映している映画館もあるので、ぜひ大画面で見てほしいですね。