京都市左京区にある、小さなクリニック。ここで診察にあたる91歳の心療内科医の言葉が、いま注目を集めています。

 後悔しない、競争しない、我慢しすぎない、「しなやなか生き方」とは? 藤井英子医師のはじめての書籍『ほどよく忘れて生きていく』から、一部抜粋、再構成してお届けします。(全2回の2回目/前編を読む)

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人への「負けん気」は忘れる

 <自分への負けん気は大切。でも、人への負けず嫌いはほどほどに。経験豊富な人の一歩引いた謙虚さが、美しく思えます。>

 負けず嫌いは大いに結構。私も振り返れば負けず嫌いによって道を開いてきたように思います。そして、その矛先を自分だけに向けることができれば、それは誰も傷つけることがない大きな武器になるでしょう。

撮影 秋月 雅

「自分は持っていない」「あの人はあれができる」と、他人と自分を比べて劣等感を抱く必要などありません。他人に対する過剰な競争心も、持っていると相手に操られてくたびれてしまいます。人の評価を求め続けるのは、心とからだ両方の毒になります。

 年齢を重ねてからの負けん気は、今の自分にできる最大限とのささやかな競争です。

 それは、今できることの中から挑戦したり、やりたかったことを経験をしたりするための「人生の青「春18きっぷ」のようなものです。

 挑戦すれば少しずつできるようになることもあれば、病気や加齢で少しずつできなくなっていくこともある。年齢を重ねるということは、誰もがそうなのですから、誰かより上とか下とかいう考え方自体が不毛です。