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「私さえ我慢すれば…なんて、悲劇のヒロインの妄想です」91歳の心療内科医が“一方的なガマンは必要ない”と考えるワケ

2023/06/04
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 京都市左京区にある、小さなクリニック。ここで診察にあたる91歳の心療内科医の言葉が、いま注目を集めています。

 後悔しない、競争しない、我慢しすぎない、「しなやなか生き方」とは? 藤井英子医師のはじめての書籍『ほどよく忘れて生きていく』から、一部抜粋、再構成してお届けします。(全2回の1回目/続きを読む)

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「家族だから」は忘れる

 <一番身近な人にこそ、「ときどき、きちんと」。 「親しき仲こその礼儀」を意識すると、 スッと気持ちのいい風が流れます。>

 心療内科で患者さんを診ていると、家族に関する悩みもたくさん伺います。姑さんとの同居の悩みがあるかと思えば、息子の妻への不満もあります。8050問題の真っただ中にいて、家から出ない子どもの将来を悲観する80代の親がおられるかと思えば、認知症の親の介護の相談をされる方もいらっしゃいます。

撮影 秋月 雅

 家族の悩みは、家族の数だけ多種多様です。そして、それはどれも尊い悩みですが、同時に、家族だからこそ距離がとりづらく、心のほどよい距離を保つことも難しいものです。

 でも、家族だからこそ、「親しき仲にも礼儀あり」を実践することで、関係性がよくなることはよくあります。これは、他人行儀ということではなくて、他人に対してするように、「ときどききちんとする」ということ。

 自分の思いの丈は「少しお時間いいですか」と時間をもらって、本音で話すことであったり、してもらったことに、きちんと正面から「ありがとう」を伝えるということです。

 私は次女と同居していますが、日々の朝食やお昼の弁当は彼女が準備してくれます。

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