そんな次女に、クリニックから帰宅するとまず最初に「今日も朝からいろいろとありがとう。お弁当ごちそうさま」と忘れずにお礼の言葉を伝えるようにしています。
身近な人に対してこそ、ときどき「きちんと」してみる。心を込めた「ありがとう」と「ごめんなさい」こそ、大切にしたいと思います。
「形だけの挨拶」は忘れる
<人との関係は、言葉で織りなされます。 ひと言付け加える手間だけで、 ただのやりとりに血が通います。>
患者さんがお帰りになるときに、「お大事に」と言わずに「ご自分を大切にしてくださいね」とお伝えします。
本来届けたい真意が伝わりにくい、「挨拶言葉」は他にもあって、「おはよう」「おやすみ」「こんにちは」をはじめ、「ありがとう」や「いただきます」「ごちそうさま」などもそうでしょう。
「おはよう」は、もともと歌舞伎の世界で使われていたという説があり、「お早いお着きですね」という意味です。芸能界では夜でも「おはよう」と言って挨拶をするそうですが、ただの挨拶ではなく、相手をねぎらう言葉だったと言えます。
「こんばんは(今晩は)」や「こんにちは(今日は)」は、本来、「今晩は月が綺(き)麗(れい)ですね」「今日は寒いですね」という共感や相手を思いやる言葉が後ろに続きました。
「ありがとう」も、「運んでくれてありがとう」と、言葉を添えることで、ただの挨拶から相手に思いを伝える言葉に戻すことができますね。何に対しての感謝なのか、それを追加することで、相手を丁寧に思いやる言葉に変えることができます。
それだけで、家族や友人、ご近所さんとのやりとりに血が通います。
さらに、ただの「ありがとう」を「○○してくれてありがとう」、「ごちそうさま」を「時間をかけておいしいごはんを作ってくださってありがとう。ごちそうさまでした」と相手に伝えることで、自分は手間をかけ大切にされる存在なのだと、気づくことにもつながるでしょう。