「親への憎しみが募る一方だったり、自分が壊れそうになっているのなら、捨てることを考えていい」

 自分を傷つけた親が老いたとき、あなたの人生はどうなってしまうのか? ここでは、要介護状態になってしまった「毒親」との付き合い方を解説。ジャーナリストの石川結貴氏の新書『毒親介護』より一部抜粋してお届けする。(全2回の1回目/後編を読む)

もし自分の親が「毒親」だったら、どう付き合うのが正解なのだろう? 写真はイメージです ©getty

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毒親との付き合い方

 かつて自分を傷つけ苦しめた親、家庭を顧みず自分勝手に生きていた親。そんな毒親が老い、介護や経済的支援などの問題に直面する子世代は少なくない。老いてなお横暴な親に失望したり、一見弱者の親に翻弄されたりする子どもの側は、憎しみや嫌悪、ときに葛藤を覚えている。これからどうすればいいのだろう、この状態がいつまでつづくのか、そんな思いを抱えながら手探りの日々を送る人たちに、いくつかの選択肢と対応方法を挙げてみたい。

 まずは親との関係性についての選択肢、ここには大きく2つがある。「捨てる」と「関わる」だ。

 親を捨てる、別の言い方をすれば逃げるとか、縁を切ることになるだろう。世間一般からすれば「親を捨てるなんてとんでもない」と非難されるかもしれないが、捨てるという選択肢を知っておくのは大切だ。

 介護・暮らしジャーナリストで、遠距離介護を支援するNPO法人パオッコの太田差惠子理事長は、「親への憎しみが募る一方だったり、自分が壊れそうになっているのなら、捨てることを考えていい」と話す。

「親孝行は美談で語られがちです。介護は人を成長させる、つらいことがあっても乗り越えられる、そんな声は多いし、確かにそれも事実でしょう。けれども現実に、今まさに毒親に苦しんでいる人にとってはきれいごとに聞こえるかもしれません。そんなきれいごとを拠りどころにしてがんばれというのは酷だし、どうしようもなくつらいのなら捨てるという選択を考えていい。毒親に関わることで破滅するくらいなら、自分の人生を優先していいんです」

 太田さんによると、毒親介護でむずかしいのは「見極め」だという。死んでも関わりたくないほどの毒親なのか、少しくらいは助けてやろうと思えるのか、見極めができずに悩む人が多い。気持ちの整理ができない場合にはひとまず専門の相談機関に出向き、親との関係性について率直に伝えるといい。

「各地域には、高齢者の生活や介護の相談窓口である地域包括支援センターがあります。自分だけでいいので、まずはここを訪ねて親がどんなサービスを利用できるのか確認してください。過去に虐待されていた、親が暴力的、家族関係が悪い、そういう事情があるなら隠さず伝えましょう。その上で親に関わらないのか、それとも何かできるのか、相談員と話し合うことが大切です」

「捨てる」としたら、必ず行政につないでおく。やみくもに介護放棄をすると保護責任者遺棄罪などに問われる可能性があるからだ。また、自分が親と絶縁すると別の身内に面倒が及ぶこともある。兄弟や親戚には事前の状況説明も必要だ。