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 一方で、関わる範囲を決められないまま親と向き合わざるを得ない人も少なくない。とりわけ毒親に苦しめられてきた人たちは、実家と疎遠だったり、親族との関わりを避けていたりする。親子関係に長い空白があるため、現在の親の健康状態や生活状況を知らない場合も多い。

 そうした状態で、親の急病や入院、生活困窮などの問題が降りかかってくる。関わり方を考える余裕や心の準備のないまま、いきなり介護がはじまる場合もあるだろう。

「それでも最初の心構えは大事です。昔の親子関係の問題、たとえば親は私にこんなひどいことをしたとか、ずっと親が嫌いだったとか、そういう過去の事情が入ってくるとつらくなる。そこだけは気づいていたほうがいいと思います」

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介護する上で知っておくべき「自分の特性」

 介護する人の支援や相談業務を行うNPO法人介護者サポートネットワークセンター・アラジンの牧野史子理事長は、「介護は勢いだけで手をつけないこと」とアドバイスする。

 突然介護がはじまれば誰しも戸惑うが、親と疎遠だったり、親子関係が悪かったりするとなお混乱してしまう。親の意思や生活状況がわからないまま、とにかくなんとかしなくてはと見切り発車する人もいるが、そんなときは「自分の特性」や「キャパシティー(許容量)」を考えたほうがいい。

「親のことはわからなくても、自分のことならわかりますよね。だからまず自分の得意や不得意、ついがんばりすぎてしまうとか、落ち込みやすいとか、そういう特性を考えてみてください。その上で自分はこれくらいなら許せそう、ここは無理、そんな意識を持つことが大切です」

 いったいなぜ自分の特性を知っておく必要があるのか、牧野さんは介護に潜む「支配」の問題を指摘する。親のためにがんばらなくては、親には自分しかいない、そんなのめり込みがときに相手への支配につながるからだという。

 とりわけ毒親に悩んできたような人たちは、親に愛されたい、自分を認めてほしい、感謝や後悔の言葉を聞きたい、そんな切なる思いを秘めている。私が取材した事例でも、「(親が)死ぬ前に、ありがとうと心の底から言わせたい」、「お詫びでもお礼でもなんでもいいから言ってもらうために、(介護を)投げ出すわけにはいかない」、そう話した人がいた。