「私はといえば、後悔ばかりの日々です。徹さんに成仏してもらおうとお葬式も、会見も、なるべく明るく笑ってやりましたが、心のなかでは、もっと優しい言葉をかけてあげていたら、最後に手を握ってあげられたら、もっと、もっと……と、そんなことばかり考えています」
昨年11月28日、61歳の若さで他界した俳優の渡辺徹さん。二人三脚で芸能界を歩んだ40余年の歳月を、妻で俳優の榊原郁恵さん(64)が振り返る。
5月に行われた「文藝春秋」の2時間に及ぶインタビュー「何があっても寝室は一緒」で明かしたのは、人知れぬ「後悔」と「感謝」の日々だった。
「なんてチャラい人なんだろう」
「初めて会ったのは、1982年、渋谷公会堂でした。司会を務めていた歌番組『ザ・トップテン』に、徹さんがセカンドシングル『約束』で初登場した時です。役者さんって歌番組に出ると、場違いな感じがするのか、緊張したり、どこか居心地悪そうにしている方ばかりで、大抵は台本通りに進行しました。ところが彼は、お酒の席での一発芸の話を振るとその場で芸を披露し始めた。チアガールだったか、なんだったか。
『なんてチャラい人なんだろう』
それが最初の印象でした。徹さんは徹さんで、本番前に廊下で挨拶したのに、そっけなくされてガッカリしたのだとか。ファン目線で抱いていた『郁恵ちゃん』のイメージが裏切られたとか言っていましたが、私はまったく記憶にないんです(笑)。学生時代には実家の部屋に私のポスターを貼っていたなんてことも、ずっと後に義母に教えてもらって知りました(笑)」
ドラマ「太陽にほえろ!」の新米ラガー刑事役で脚光を浴びた徹さんは当時、グリコのCMソングから始まってヒット曲を連発。会場には黄色い歓声が飛んだ。