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(以下、2022年7月26日追記)

やっぱり、風化しているのかな

 事件から14年目にも、大友さんは現場を訪れ、手を合わせた。前年までは僧侶がお経を読み上げていたが、今年はそうした光景はない。

「現場に来て驚いたのは、(事件が起きた)交差点付近での献花を見て、『あれ、なんだろうね。花とか置いてあるけど』『大きい交通事故でもあったのかな』などと話をしている人がいたこと。事件を忘れている人が多いんでしょうね。これは1、2年目には絶対なかった光景です。やっぱり、風化しているのかな。ただ、何回来ても、これが正解だった、というものはわからないです。それを考えるために来ている」

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14年目も現場で手を合わせる大友さん

 心境はどのように変わったのか。

「会社が徒歩5分のところにある。普段でも、交差点を通るときに手を合わせるので、僕にとっては日常のこと。僕の中では何も変わっていない。14年間、自分の知っていること、わかること、考えたことをTwitterや取材で発信しているだけです。そうすると、被害者の方から連絡をいただきます。『語ること自体、被害者への冒涜だから、(発言を)やめろ』と言われることもあります。Twitterでは、一人ひとりに返事をさせていただいています。

 加害者側と被害者側の間には、分厚くて、一生越えられない壁があるのかなと思います。でも、事件について発信しなければ、さまざまな問題に蓋をする社会が続いてしまうことになります。批判には謝罪しつつ、発信は続けます」

14年目の事件現場

 あらためて加藤死刑囚について尋ねると、こう答えた。

「加藤くんは自殺未遂をしたことがあった。それを隠して生きてきました。その半年後、加藤くんに会ったときに家族の話をしたんです。あきらかに触れてほしくない嫌悪感を抱いているような態度でした。そのとき、自分にも家族に問題があったし、辛い思いをしたことを話せればよかった。そうすれば、心のしこりを話せたのではないか、という思いが今でもあります。

 今現在も、加藤くんと同じような思いを抱いている友人や知人がいる人もいるでしょう。そういう人には勇気を持って、(相手の心に)一歩踏み込んでほしい。もしかしたら、起きるかもしれない無差別殺傷事件の抑止、防止につながるんじゃないか」

写真=渋井哲也