俳優・エッセイストの本上まなみさんとnews zeroメインキャスターの有働由美子さんの対談「18歳年上夫と京都移住で人生が変わった」を一部転載します(文藝春秋2023年6月号)。
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「つらい体がすっかり癒やされるような力」
有働 夫婦共著での京都暮らしのエッセイ『一泊なのにこの荷物!』(ミシマ社)ご出版おめでとうございます。私、二日酔いの朝にベッドで読ませていただいたんです。クスッと笑ったり「あるある!」と頷いたりしながら一気に読んじゃって。つらい体がすっかり癒やされるような力を感じました。
本上 ありがとうございます。この本のもとになったウェブ連載は、コロナ下に突入した時期に始まったんです。夫(編集者・エッセイストで『暮しの手帖』前編集長の澤田康彦氏)が東京での4年間の単身赴任を終えて、京都へ戻ってきた直後でもあったんですけど。
有働 家族が揃ったと思ったら、自粛生活が降りかかってきた。
本上 そうなんです。それ以前は家族で行きあたりばったりの旅行をしたり外向きの生活だったのが、自宅中心の生活になった。その影響がこの一冊に強く出ていますね。
有働 コロナ下だからこそ京都でのびのび子育てをする様子が鮮明に描かれている気がしますね。
本上 小さな暮らしの記録ですけどね。私が「あさごはん」「運動」といった各章ごとのテーマを決めて、私→夫の順に綴っていきました。
有働 私は子育ての経験はないけど、お子さん2人の描き方がすごく面白くて、自分の子ども時代の記憶が喚起されました。海に行った時の気持ちとか、小鳥を飼っていたこととか。すっかり忘れていたささやかな思い出が甦り愛おしくなって。
本上 嬉しいです。気が滅入る状況下での連載だったからこそ、家族の楽しかった記憶を手繰り寄せながら書いていました。
有働 俳優でエッセイストの本上さんですが、キャリアのスタートはモデル業だったんですよね。
本上 はい、10代の頃に縁あって。オファーをいただいて初めて成り立つ仕事なので、当時は一生懸命でしたけど、今思えばずいぶん空回りもしてきましたね。
有働 どういうことですか?
本上 男性が読むような雑誌のグラビアなどの仕事が多かったんですけど、身の丈に合っていないような居心地の悪さがあって。無理してでも期待に応えようとするほど疲れてしまって、実はずっと具合が悪かった。変わったのは仕事で夫と出会って、結婚してからです。