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結婚してラクになった

 有働 本上さん27歳、夫の澤田さんが45歳の時ですよね。

 本上 そう。当時の赤坂プリンスホテルの旧館で結婚式を挙げたその瞬間にラクになったんですよ。

 有働 えっ、結婚でそんなに劇的に変わりましたか。

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 本上 というのも私は学生時代から仕事していたし会社勤めもしたことがないから、組織の一員として頑張った経験がほとんどなかったんです。それが結婚した瞬間に「自分の所属が決まった!」と感じられて。家庭という根城ができたことで気持ちがうんと軽くなりました。

『一泊なのにこの荷物!』(ミシマ社)

 有働 18歳年上で当時マガジンハウスの編集者だった澤田さんは、相当頼もしく映った?

 本上 それが、年齢的なものはまったく感じたことがなくて。私の内面がすごく老けていたからかなと思います。私は長女で、小学生の頃から晩御飯のおかずを作るとか家庭の用事をこなしていたので。だから夫と出会った時には既に精神面はおばちゃんで、一緒に歳を重ねるうちに真のおばちゃんになった感じです。

 有働 身も心も(笑)。

 本上 そうそう(笑)。

 有働 一緒に20年の歳月を重ねて、関係性はどうなりましたか。

 本上 単なる老夫婦ですよ。16歳の娘と10歳の息子がいて日々若い子と接しているわけですけど、2人して孫の面倒を見ているような心境です。「若いっていいなぁ、肌がピチピチしているなぁ」って。

 有働 ハハハ。そう聞くとエッセイそのままなんだなと納得です。若いお母さんって子どもを思い通りに育てようと気負いがちですけど、本上さんは一歩引いている。お子さんを愛でるように見ていらっしゃる印象を受けました。

 本上 ですね。たとえば上の子に「お姉ちゃんなんだからああしなさい」みたいなことは極力言うまいと心がけています。子どもたちも年齢が離れているので、一人っ子が2人みたいな育ち方をしていますね。それぞれが割と気ままで、持ち味がそのまま出ているような感じです。

 有働 余裕があるな~。子育てでカリカリしている親御さんにはこの本を読んで一息ついてほしい。

 本上 私もカリカリすることはあるんですよ。夫は会社勤めを終えて今は家で仕事をしているので、子どもたちが学校へ行った後に、2人でお茶を飲みながら「はぁー、今日も疲れるな」って言い合っています。