2022年に安倍晋三元首相が選挙演説中に銃撃された事件をきっかけに、旧統一教会など親が宗教を信仰している子どもたちの問題が“宗教2世”として取り沙汰されるようになった。そこから自らを宗教2世だとしてSNS等で発信する人も出始めたが、転換点となったのが3月に『小川さゆり、宗教2世』を上梓した小川さゆりさんが名乗り出たことだった。
インタビュー後編では小川さんに、告白によって生じたSNS上での様々な衝突と、それを受け止める覚悟について伺った。(全2回の2回目/前編を読む ※取材は今年4月に実施)
◆◆◆
今も苦しむトラウマ
――小川さんはTwitterで元宗教2世としての思いをつづっていたところ、メディアの取材をきっかけに顔を出して発言するようになり、あの日本外国特派員協会での記者会見に繋がりました。顔を出して告発するというのはものすごく勇気のいることですよね。
小川さゆり(以下、小川) 顔を出し自分の声で発言したのは、子どもがいる一人の女性として、生身の人間としての自分を知ってもらわないと、問題の深刻さが世の中に伝わらないと思ったからです。
それは他にもまだいるであろう悩んでいる人たちの助けにもなりたいし、今後同様の人をこれ以上出さないためというのもありますが、自分の中にも、まだ解決されていないトラウマ的な部分があるんです。今でもたまにフラッシュバックに苦しむことがあるので、おそらく昔の自分も救いたいという思いもあってやってるんだと思います。
――フラッシュバックの内容や場面を具体的に教えてもらうことはできますか?
小川 小中学生の頃にいじめられていたときのことだったり、誰にも言えず一人で学校に行っていたときのことだったりとかです。わたしたちきょうだいは学校には教会のことは隠していたので、はっきり“信者の家庭”であることを理由にいじめられていたわけではありません。でも貧乏だとか、臭いと言われたりという原因は信者だったことにあるのは間違いない。それを明らかにすることで救われる部分もあるし、やはり一番達成感を感じたのは厚労省のガイドラインが出たことです。
自分ではすごく辛かったけど、それが虐待だったのか、そうではなかったのかというあいまいだった部分が、虐待と認めてもらえたのは非常に大きい成果だと思います。