オリエンを受けてから提案まで1カ月ほどしか猶予がなく、一度その仕事がはじまってしまったら1カ月間人権を失うが如く働きつづけることになります。
プレゼンを獲得するために広告代理店からの修正地獄がつづきます。高いクオリティを求めるため、手を抜くことは許されません。広告代理店も獲得しないと意味がないため、死ぬ気で取り組んでいます。
そんな人たちから仕事を受けているので、当然デザイン事務所のデザイナーもその気持ちに応えるように毎日深夜まで作業をして親身に対応しなければいけません。
負ければタダ働き、精神が蝕まれていく
そして、コンペ案件は金額面も非常にシビアです。
クライアントのお眼鏡に適って採用されれば多額の広告制作費が入ってきますが、獲得できなければ、少額のプレゼン費(10〜20万円)しか支払われません。会社レベルで見ればタダ働きのようなものです。
コンペは勝たなければ意味がないので、この仕事に関わる人たちは勝つために深夜まで残業し、徹夜をし、6時間にもわたる長時間の打ち合わせも平気で行います。定時など関係ありません。
この仕組みが広告業界のブラック労働の原因であり、この仕組みによってみんな精神を病んでいきます。
あえて、良い点があるとすれば、必死だからこそ実力が磨かれ、成長するというのはあります。
ブラック環境で生き抜いてきた猛者たち
しかし、これだけ過酷な労働環境でもみんな文句も言わず黙々と働きつづけています。なぜかというとこの仕事に携わっている人は“超仕事好きな人たち”ばかりだからです。
仕事のためなら食事もせず、睡眠も削り、プライベートの時間もすべて仕事に費やします(中には器用にプライベートも充実させている人もいます)。
並々ならぬ気持ちで仕事に取り組んでいる人がとても多いです。そして仕事に人生を費やした末に独身でいる人も多いです。知り合いの事務所や広告制作の会社も独身の人が多く、40代以降の女性の独身率がかなり高いです。みんな猫を飼うなどして心の隙間を埋めています。