一方で、投資のことをよく理解し、つみたてNISAやiDeCoなどの非課税投資制度を夫婦で満額まで活用しようとする人もいます。つみたてNISAは月額約3万3千円まで(2023年時点)、iDeCoは企業年金のない会社員なら月額2万3千円までできますから、1人の満額は約5万6千円。これを夫婦2人分、約11万2千円ずつつみたてていくので、毎月の収入に加え、貯金から回して捻出していくことになります。投資に回せる貯金があれば、一度にそれを投資に回そうとする人もいますが、じっくり時間をかけ、分散しながら投資に回す方がよいでしょう。
NISAの制度改革が決まる前、すでにiDeCoについても60歳未満までだった加入年齢の上限が65歳未満まで延長されることが決まりましたので、併せることによってより効果を発揮すると思います。
また、高齢者を中心に自宅でお金を保管する「タンス預金」も増えているようです。
日銀の資金循環統計(2022年第4四半期)によれば、家計部門は現金・預金だけで1116兆円あるとか。国家予算の10年分にも及ぶ額と考えると恐ろしいほどです。株や保険、年金などを含めた家計の金融資産残高は2023兆円で、証券が311兆円(15.4パーセント)、保険・年金・定型保証が536兆円(26.5パーセント)あります。これに対して現金・預金は55パーセントを占め、他を圧倒していると言えます。
ところが、現金をいくら持っていても、お金は増えていきません。ゼロ金利政策を採用している日本では、銀行に定期で預けたとしても金利は年率で0.002パーセントほどですから、100万円を1年間預けてもわずか20円。ほとんど増えることはありません。タンス預金であればゼロです。少しずつでも資産価値を高めていくことを考えなくてはならないわけです。
つみたて投資は定年期から始めるのがちょうどいい
定年期の月当たりの収入を、本書では30万円と設定しています。60歳を中心に、前後5歳ずつ、55歳から65歳くらいまでの方をボリュームゾーンとして想定しています。
再雇用となってこれまでの6~7割の収入で働くとして、手取りで20万円前後。30万円は旦那さん一人ではちょっと大きい数字かもしれませんが、共働き家庭だったらあり得そうな気がしています。旦那さんが20万円、奥さんが10万円くらいでしょうか。
貯金や投資に回す金額は月の収入の6分の1という設定なので、収入が30万円という設定は計算もしやすいかと思います。
介護施設に入居時の年齢は80代で46.4パーセント、90歳以上で23.8パーセントというデータもあり、80歳を超えてからの入居者が7割を占めています(LIFULL senior「介護施設入居に関する実態調査」2020年11月)。
介護施設に入る年齢を考えると、つみたて投資は定年期から始めるのがちょうどいいということが言えます。