6月14日朝に岐阜市内にある陸上自衛隊「日野基本射撃場」で発生した18歳の自衛官候補生の男による発砲事件。菊松安親1曹(52)が胸に2発、八代航佑3曹(25)が脇腹に1発被弾して死亡し、原悠介3曹が太ももを撃たれ重傷を負った。未だ動機など不透明な部分があるが、発生から3日が経過し、悲惨な事件の詳細が徐々に明らかになってきた。防衛省関係者が明かす。
「容疑者は、事件発生当時、次に射撃するグループの一員として待機場所にいました。射座についてからやるはずの弾倉の装填を始め『動くな』と叫びました。いち早く制止しようとした八代3曹が最初に撃たれました。そして、男は的とは真逆の後方に進み、菊松1曹に向かって発砲。さらにこれを制止しようとした原3曹にも発砲し、再び菊松1曹に発砲しました。教育隊長らが男を取り押さえましたが、なおも男は数発発砲したようです。弾倉を取り外されても、それを拾って再び撃とうとするなど狂気じみた犯行でした」
現役自衛官は「そんなところで(弾を)配っちゃまずいだろう」
射撃訓練の教官を務めた経験もある現役自衛官は、事件についてこう話す。
「小銃の取り扱いは非常に厳格で、ひとつひとつの行動は細かいルールに基づき、上官の指示の下で行われます。私が教官をしていた際は、訓練生は順番が来ると射撃線のある場所まで進み、銃を足元に置いてから実弾が置いてあるところへ取りに行っていました。弾倉に装填するのは射撃線に戻ってからです。まどろっこしい手順ですが、安全管理のために詳細に決まっていたんです。この間、薬莢回収係や射撃係が注視しているので、今回のような犯行を行うことは非常に難しい状況でした」
では、なぜ今回のような悲惨な事件が起きてしまったのか。
「テレビで映像を見て驚愕したのですが、どうやら射撃線から10メートルほど後方の待機線で実弾を渡されていたようです。『そんなところで配っちゃまずいだろう』というのが正直な感想です。教官の立場としては、実弾が装填された小銃を持った隊員が自分の後ろにいるのは想像するだけでも怖いはず。明らかに射撃訓練のオペレーションに問題があったのではないかと思います」