事件発生当時、「AEDを探せ」「コンビニにある」と叫ぶ隊員らの怒声やコンビニに駆け込む隊員を近隣住民が目撃していた。この現役自衛官はこの点も疑問視する。
「通常、射撃訓練をする時にはAEDを携帯しますが、今回は持ってきていなかった。射撃訓練と別の場所で対戦車ミサイルの訓練のようなより危険な訓練が行われていて、そちらに優先してAEDを配置した可能性はありますが……。もし事件現場にAEDがあれば死亡した隊員が助かっていたかもしれないと思うと、残念でなりません。防衛省としても、今回の悲惨な教訓をしっかりと活かさないといけないと思います」
容疑者の男を知る人によれば、男は「中学時代からキレやすい問題児だった。特別支援学級にいたはず」という証言もある。
森下泰臣陸上幕僚長は会見で、記者から「容疑者の適性に問題はなかったのか」と質問され、「採用時において特に問題があったとは承知していない」と答えている。本当に容疑者の男を採用し、自動小銃を触らせることに問題はなかったのだろうか。
安全保障アナリストで自衛隊にも詳しい慶應義塾大学SFC研究所上席所員の部谷直亮氏はこう指摘する。
「自衛官候補生の質の悪化は近年ずっと問題視されています。最近は募集枠の半分程度しか集まらず、なりふり構わない採用になっている。前科があるとさすがに無理ですが、万引きの前歴程度や名前がちゃんと書けなくても採用されることも。容疑者についてリスクがわかっていたのならば、銃を触らない事務官に配置転換することもできますよね。自衛隊は銃や戦車を扱う組織ですから、適性のない人間が配置されれば今回のような惨事が起きてしまう。しかし人事のミスマッチが自衛隊では頻発しているんです。
容疑者の男は、第一線の精鋭部隊を希望していたとも聞いています。それが評価につながっていた可能性もあります。募集が少ない中で厳しい部署を希望する人がいれば目立ちますからね」