「ココスでは残業をすればするほど給料が下がる評価システムになっています。本人の能力不足で残業が増えるなら仕方ないにしても、理由は明らかに人手不足。早朝から深夜まで働いても給料が下がってしまうので残業時間を少なく申請せざるを得ません。睡眠不足でボロボロになって働いているのに、報われない。会社は社員を人として扱っていない、単なるコマとしか見ていないんです」
こう語るのはココスのとある店舗で店長として働いているAさんだ。
飲食店業界では今年4月にくら寿司の店長が自殺、すき家ではパート従業員が死亡する事件が起き、労働環境が注目されている。Aさんが勤務しているファミリーレストランのココスも同様に劣悪な労働環境にあるという。Aさんは絶対匿名を条件にココスで行われているブラックな勤務実態を語った。
ココスは1980年に茨城県に第1号店を開店。茨城県を中心にチェーン展開をしていた。2000年に運営会社の「カスミグループ」がココスを含む外食部門を売却し、現在のゼンショーホールディングスの傘下に入った。これをきっかけに急速に店舗を拡大。現在は全国に500店舗以上を展開する大型ファミリーレストランである。
「睡眠時間もろくに確保できない日が続いて、運転中に…」
同じゼンショーホールディングスの傘下であるすき家では2022年1月にパート従業員の58歳の女性が死亡する事故が起きている。1人で洗い物から接客、調理まですべてを行う、いわゆるワンオペ状態であることが問題視された。すき家は6月中に朝帯のワンオペを廃止することを発表している。
「すき家は問題が起きて目立ちましたが、同じグループの中ではココスの労働環境もかなり過酷です。特に早朝から深夜まで営業している店舗は人員不足で社員が穴埋めのために長時間働かざるを得ない状況です」
Aさんは、全体の8割の店舗で人員不足の状態にあるのではないか、と指摘する。現在Aさん自身も深夜営業の店舗で働いているが、社員であるAさんが無理をしてようやく営業できている状況だという。
「自分も朝9時に店舗に出て、深夜2時の閉店まで仕事をすることが日常茶飯事。休憩も食事もとる暇がなく立ち仕事を続けて、ずいぶん体重が落ちました。睡眠時間もろくに確保できない日が続いて、運転中に数秒間意識を失ったことが何度もあります。ハッと気づいたらずいぶん前まで進んでいて焦ったこともあります。幸い車が少ない時間帯だったので、事故には至りませんでしたが、いつか重大な事故を起こしてしまうのではないかと怖くてなりません」