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 女優時代もそれなりにお金に関する知識はあったが、未来を意識してお金を扱うことはなかったし、「何となく貯金しておけば安心だな」というふんわりとした目標のみで、それに対する具体的な期間や数字、手立てを詰めることはしていなかった。

 しかし、引退して「何に挑戦したいか、どんな世界に身を投じていきたいか」とキャリアを考え直す際に、自分のやりたいことがあったときに、お金を理由に諦めたくないという思いが芽生えてから意識が大きく変化した。

 もちろん年収が下がった分、以前よりも財布の紐は固くなったが、ストレスからくる「何でもいいから買いたい」欲求で手に入れたものに囲まれて暮らすよりも、私が本当に欲しいと思ったものに囲まれた暮らしの方がはるかに居心地よく感じる。

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「何があっても二度とセックスでお金を稼がない」と誓った

 なかには「稼げていたころに戻りたくならないか?」と尋ねてくる人もいる。今の仕事は撮影数回分の金額を1ヶ月かけて稼いでいるので、「そんなことコスパが悪い」と言われることはあるけれど、私はそうは思わない。

 AV女優を引退するときに「何があっても二度とセックスでお金を稼がない」と心に誓った。最初の一歩が難しいだけで、二度三度と続けるうちに、自らのセックスをお金に変えることへのハードルは下がっていく。

 例外はあるだろうが、年齢や容姿の良し悪しが判断基準となる世界でお金を生み続けようとするのはかなり難しいこと。「この仕事を続けたい」という明確な理由がなく、ずるずると辞める期限を先延ばしにして、肉体と精神を差し出し5年10年と留まり続けたとしても手元に残るものは僅かだ。それを理解しているので、刹那的な稼ぎのために同じ業界に戻ることはない。

写真=佐藤亘/文藝春秋

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