「ブランド力が高い」と言われている企業は何が違うのか。マーケターの西口一希さんは「有名企業のプロダクトでも必ずしも売れるわけではない。そもそもプロダクトに具体的な便益と独自性が想起できなければ、顧客にとっての価値はない」という――。
※本稿は、西口一希『マーケティングを学んだけれど、どう使えばいいかわからない人へ』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。
「ブランド力が高い」とはどういうことか
「多くの人がそのプロダクトを知っている」だけでは、ブランディングがうまくいったとはいえません。どういう便益とどういう独自性があるかということが伝わってはじめて、それに価値を感じる人たちが出てきて「それなら、お金を払って手に入れたい」と思ってもらえるわけです。ですから、ブランド力が高い状態というのは、そのブランドによって、最初からある一定の価値を感じてもらえるということです。
たとえば、「トヨタのレクサスから出た新シリーズ」といわれたら、レクサスという名前が、ある程度の価値を持った車を期待させてくれます。これはとくに高級ブランドに限った話ではなく、一般的なブランドでも同様です。「マクドナルドから新しくホットドッグを発売します」といわれたら、いつものハンバーガーとは違うけれど、ある程度の価値を期待する人が多いのではないでしょうか。なぜならマクドナルドに対しては、すでに一定の価値ができあがっているからです。それが、ブランド力が高いという状態です。
ただし、有名企業のプロダクトだからといって必ず売れるわけではありません。知名度や認知度のある会社は、新しい提案をしたらお客さまに注目してもらえる可能性は高くなりますが、そもそもプロダクトに具体的な便益と独自性が想起できなければ、お客さまにとっての価値はありません。
Appleが洗剤を出しても購買には結び付かない
たとえば、Appleが自動車をつくって売りだしたとします。Apple社製の車って、ちょっとよさそうですよね。これは売れるかもしれません。では、Appleが衣料用洗剤を出したら、どうでしょうか。それはどんな洗剤なのか、なぜAppleが洗剤を出すのか、まったくわかりませんよね。