6月23日、SNSで武装蜂起を宣言したロシアの民間軍事会社「ワグネル」創始者のエフゲニー・プリゴジン氏(62)。「軍幹部の悪事を止めなければならない」とプーチン大統領の方針などを激しく批判し、首都モスクワの直前まで進軍していた。ところが24日になり事態は一転。ベラルーシのルカシェンコ大統領の仲裁もあり、プリゴジン氏はワグネルの部隊を拠点に戻すことに合意した。プーチン大統領もプリゴジン氏を反乱罪に問わない決定を下した。

 “盟友”関係にあったプリゴジン氏とプーチン大統領の間になぜ亀裂が走ったのか。その背景を解説した「週刊文春」4月27日号の記事を公開する。 

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 4月14日、ロシアの民間軍事会社「ワグネル」の創始者、エフゲニー・プリゴジンが、「プーチン政権はウクライナへの特別軍事作戦の終結を宣言すべきだ」との声明を出した。開戦1年の2月24日時点の境界線を停戦ラインにすべきという条件を示した上で、「長期化は敗北の可能性がある」とまで踏み込んだ主張を展開。

 大統領の“盟友”から、停戦を求める意見が出たのは初めてのことで、ロシア内で波紋を呼んでいる。

 プーチンはこの提言には一切反応せず、同日、動員逃れを防ぐ召集令状の電子化法案(令状を送付した時点で効力を持つ)に署名し、戦争継続の構えを崩してはいない。

前線で戦況を語るプリゴジン

なぜプリゴジンは、停戦案を提示したのか

 なぜプリゴジンは、停戦案を提示したのか。背景には、発言力を担保してきた兵力の激減がある。5万人とされたワグネル軍団は、激戦で1万人程度になったとされる。さらなる兵力の消耗を避けたいのがプリゴジンの本音だろう。ただ、そこに留まらない政治的野心も見え隠れする。