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 プリゴジンは昨年秋から、政権への反逆行為を繰り返してきた。ショイグ国防相やロシア軍を「弱虫」呼ばわりし、ラブロフ外相ら外務省を「無能」と批判。そのため政権内では、反プリゴジンの動きが加速した。

 批判の一方で、プリゴジンは野党・公正ロシア(下院450議席中27議席の第三党)のミロノフ党首に接近している。ミロノフはもともと政権に近く上院議長を務めたこともある人物。同党を乗っ取るか、一部の議員を離党させての新党立ち上げを画策中のようだ。下院に議席を持つ政党は無条件で大統領候補を擁立できる。成功すれば来年3月の選挙で立候補し、プーチンと直接対決することも可能となる。

プリゴジンがここまで強気になれる理由

 プリゴジンがここまで強気になるのは、一部の国民から熱狂的な支持があるからに他ならない。彼は危険を顧みず最前線を訪れ、SNSで情報発信をしてきた。そのためロシアの新しい愛国的英雄となったのだ。一部の情報機関幹部やオリガルヒもそこに価値を見いだし、陰から支援している。

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 このような動きを政権側が放っておくはずがない。プーチンからプリゴジンへの「警告」だったとする見方が根強いのが、4月2日に起きた軍事ブロガーの爆殺事件だ。現場はプリゴジンと関係の深いサンクトペテルブルクのカフェ。死亡したブロガーはプリゴジン支持者で痛烈な軍部批判を行っていた(露政府はウクライナの犯行と断定)。

 戦争の泥沼化が、ついにロシアエリート層の分裂を生むことになったといえる。