まさかの“11人中10人がタイガースの選手”SNSでは批判が殺到
7月5日、日本野球機構(NPB)は「マイナビオールスターゲーム2023」に監督推薦で出場する選手を発表した。これにより、14日に発表される「プラスワン投票」で選出される2人(両リーグ1名ずつ)を除くオールスター出場選手が出揃った。
今年のオールスターを巡って、大きな話題となった“事件”がある。それが、“ファン投票による阪神タイガースからの大量10人選出”だ。投手3人(先発・中継・抑え)と野手8人の計11ポジションのうち、秋山翔吾(広島)を除く10ポジションをタイガースが独占。この結果を受け、主にSNSを中心に賛否両論……というよりは、圧倒的に「否」の意見が噴出した。
「オールスター出場にふさわしくない」
「コレだから阪神ファンは……」
「さすがに違和感ある」
「投票結果を見て萎えた……」
「選ばれた選手もかわいそう」
白状しよう。阪神ファンとして、今回の“10人選出”に違和感がないかと言えばウソになる。筆者自身、今年のオールスターで一度だけファン投票を行った。セ・リーグ11ポジションのうち、投票したタイガースの選手は3人だ。
ただ、だからと言って今回の投票結果にケチをつけたり、まして批判の矛先を選手や、投票したファンに向けるのはお門違いだとも思うのだ。
そもそも、なぜオールスターで「ファン投票」が行われるのか。純粋に野球の実力だけで選ぶのであれば、選手間投票や監督推薦だけでいいはずだ。また、野球というスポーツは他競技と比べても圧倒的に「選手の実力」を示す数字が多い。であれば防御率やセーブ数、打率、ホームラン、最近で言えばWAR(※セイバーメトリクスにおける選手の実力の総合指標)などの数字が上の選手から順に選べばいい。
そうではなく、「ファン投票」で選手が選ばれ、しかも真っ先に発表される理由。それは単なる数字ではなくファンが「見たい」「出てほしい」と思う選手こそ、夢の祭典・オールスターにふさわしいからではないだろうか。
ファン投票の選出規定には、以下のような文言がある。
ファン投票終了時点(6月18日(日))で本年度公式戦において以下のいずれかの規定数を満たしていること
1.投手として5試合以上登板または10投球回以上
2.野手として10試合以上出場または20打席以上
いわゆる「オールスター出場にふさわしい成績」を考えたとき、この規定はハードルとしては低すぎるようにも思える。ただ、裏を返せばここにこそ「実力はもちろんだが、ファンが見たい、出てほしいと思う選手」を選出してほしいという意図が透けては見えないか。
プロ野球は、興行だ。球団の収入や選手の年俸は、元をたどればチケット代やグッズの売り上げ、放映権などで賄われている。アマチュアと違い、野球で給料をもらっているプロ野球選手を支えているのは、外ならぬファンの存在だ。
極論を言えば、打率10割を誇ろうが、ホームランをシーズンで100本打とうが、40勝しようが、シーズン通して1点も許さなかろうが、その選手を「見たい」というファンがひとりもいないのであれば、プロ野球選手としての“価値”はないに等しい。
プロ野球選手の価値は、決して「数字」だけではない。実力以外にも選手としての“華”であったり、見るものを惹きつける“魅力”であったり、“ファンサービス”であったり、見えない部分でのチームへの貢献であったり……。