謝罪はナシ、自分を正当化するメールや手紙
話をするなかで、C代さんは離婚に対しては消極的なことがわかりました。一方で「一日中掃除をしているのが本当につらい」「家に縛りつけられているようで苦しい」と何度も口にします。となると離婚ではなく、まずは別居をすればC代さんの悩みは解消できるかもしれないと考えました。
動画と音声で、夫のモラハラ的な言動の証拠を残して、同時に財産分与の資料も集めます。そして別居の意思と弁護士が代理人になった旨を伝える手紙を置いて、C代さんは子どもと一緒に家を出ました。
当日、夫の帰宅時間ぴったりに、C代さんの携帯に夫から着信が。続けて何度か鳴ったあとは、メールの嵐です。返信がないとわかると、ようやく私の事務所に電話がきました。
妻と直接話をしたい、話せばわかると、対面の機会を求めるのがモラハラ夫のデフォルトなやり方です。期間は人によってさまざまですが、直接の対面を断っても、短くて3日、長くて1カ月間、謝罪のような動画やメール、時には手紙を送り続けます。
「謝罪」ではなく「謝罪のような」とするのは、ただ自分を正当化する文面でしかないからです。「私に養われる身のあなたが家事や育児の手を抜くのはおかしいと思いませんか」「至らないあなたを指導するつもりでつい怒りましたが、あなたのレベルには厳しすぎたかもしれませんね」と、およそ妻に帰ってきてほしいとは思えない内容で、こういったところからも、日頃、妻に対して高圧的な態度で接していたのが見てとれます。
このケースでは、調停で婚姻費用が決まったあと、籍は抜かずに別居を続けることになりました。夫の収入が高いため、安定して婚姻費用をもらうことができれば、C代さんと子どもが新しい生活を始められるからです。
家事のプレッシャーからようやく解放
後日事務所に来たC代さんは、「ずっと家事のことで頭がいっぱいだったから、そのプレッシャーから解放されて本当に幸せです」と、笑顔で話してくれました。夫に知られないようにと相談にやって来たあの日とは、まるで別人のようでした。