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「AI時代に生き残れない中間管理職はこんな人」――冨山和彦の正解

AI経営の第一人者が未来を予測 #3

2018/03/05
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 AIやIoTで起業するために重要なことは? 安泰といわれた業種はどうなる? 生き残れるサラリーマンは? 企業再生の第一人者であり、産業界全体から見た人工知能に精通する冨山和彦さんに、これからを生き抜く心構えを一問一答式で訊く、全5回シリーズの第3回(#2「AIが変える銀行業務」より続く)。

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『AI経営で会社は甦る』(冨山和彦 著
『AI経営で会社は甦る』(冨山和彦 著

Q AI時代に生き残れる人、生き残れない人の特徴は、それぞれ何でしょうか。また、冨山さんは中間管理職の8割は必要なくなるとおっしゃっています。生き残る2割の中間管理職、生き残れない8割の中間管理職の違いとは何でしょう。

A 受け身でものを考え、事前調整して保険をかけるようなタイプは危ないです。

 あらかじめ答えが存在していて、そこに辿り着くことが求められるタイプの仕事は、今後AIでどんどん置き換えられていきます。そんななか残るのは、何らかのクリエイティビティに関わる仕事です。そもそもなにが問題なのかを発見し、問題設定をするような仕事です。

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冨山和彦氏 ©平松市聖/文藝春秋

 もうひとつは、それとはまったく反対で、人間を相手にして人間と関わり合いながらする仕事です。たとえAIがかなり発達しても、個々の人間の極めてデリケートな部分であるハートを掴む能力というのは、たぶん限界があるんです。人間はいい加減というか、非安定的な生き物ですから、その深いところにタッチする仕事は残ります。サービス業でも、一番最後まで残るのはじつは接客系だと思っています。その瞬間、瞬間の相手の顔色を見るというのは、やっぱり人間が得意なんですね。

 渋谷のスクランブル交差点を上手に渡るというのも、AIにとってはハードルが高いです。歩行者みんなが違うルールで横断しているし、しかも渡っている途中でまた気が変わって違う動きをしたりと、極めてアナログで曖昧な行動をとっている。なので、じつはお互いに駆け引きをやりながら渡っているんですね。その瞬間ごとの駆け引きというのは、AIが相当に進化すれば最後はできるかも知れないけれど、莫大なお金がかかる割にはリターンが少ないような気がします。 

 それから、会計士はこれから危ないかも知れません。最近はコンプライアンスが厳しくなったせいもあり、会計士は裁量を働かせるな、という時代になってきています。だからもう会計基準通りに、杓子定規にやってください、という具合になっています。これはむしろ、人間よりもAIのほうが得意な分野です。

©近藤俊哉/文藝春秋

 弁護士は意外と残ります。なぜなら、交渉が要求される仕事なので。交渉というのは、意外と理屈通りにいかないし、ある意味、理不尽さもありますから。じつは法律にはファジーな側面があります。

 税理士も意外と大丈夫です。これはやや言いにくいところなのですが、税務署には曖昧さがあるというか、課税当局側にいろんな意味で裁量権があるからです。そのため、解釈の幅というものが出てきて、ネゴシエーションが必要になるからです。