岡山刑務所が特に酷いということでもなく、どこの施設も似たようなものだった。もちろん現在は各施設に洗濯工場があり、洗濯は懲役の刑務作業の一つで、収容者の洗濯物を預かって工場内の洗濯機で洗濯して乾燥させるのだ。
最悪の「ムショ飯」
また、牟佐は食事も最悪だった。
俺は佐賀少年刑務所、佐世保刑務所、神戸刑務所、広島刑務所での懲役を経験しているが、各施設にはだいたい「名物」があった。前に書いたように神戸刑務所は「筑前煮」がうまいと評判だったし、カレーライスはどこの施設でも人気があった。
全体的に施設の食事は「収容者の健康への配慮」を口実に塩分は控えめなのだが、牟佐は「控えめ」にもほどがあったし、米も古米どころか「古々米」というレベルで、炊いた飯が大きなダマになっていて、ベトベトだった。副食もこれまたマズい。
なぜ岡山刑務所がこんなに酷い飯であったかというと、そこに収容されている人間との関係があると思う。
と言っても、岡山刑務所に入っているのが特別凶悪だから、懲らしめるために酷い飯になっているというわけではない。
たしかに岡山刑務所は殺人などの重罪を犯した、長期受刑者が収容されているが、それよりポイントなのはこの刑務所は初犯を受け入れる施設であるということだ。つまり、他の刑務所の飯を知らない連中だから、とても食えたものではない飯を出しても「刑務所だからこんなものなのだろう」と納得する。刑務所の側はそこにつけ込んで古々米を出したり、極端な塩分節約をするのだろう。普通の累犯刑務所だったら、暴動が起きても不思議のないレベルだ。
さらに長期受刑者たちは1日でも早い仮釈放を望むから、不満を持っていてもぐっと堪えて刑務所に文句を言わない。ましてや暴動を起こしたりもしない。この状況は今でも変わっていないと思う。(続きを読む)
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