刑務所で「合格率3%」の超難関・司法書士試験を受けることを決意した山口組系元暴力団員の甲村柳市氏(1972年、岡山県生まれ)。合格までに8年の月日を費やした、その独自の勉強法とはいったい?
現在は東亜国際合同法務事務所所長である甲村柳市氏の新刊『元ヤクザ、司法書士への道』より一部抜粋してお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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俺の家庭教師は「裁判所」
話を司法書士試験の勉強に戻そう。
では、具体的にどのように勉強すればいいか。
俺も独居房だけで勉強していたわけではない(笑)。
でも、考えたら出所しても似たような感じで勉強していたかもしれない。
俺がやったのはひたすら自宅で地味に机に向かうこと。
司法書士の試験範囲は膨大だが、とにかく過去問を解くことによって理解を深めていった。
ちなみに司法書士は難関なので、多くの人は行政書士と同じく学校に通ったり、通信制の講座(今はネットがあるから学校の講義をどこにいても受けられる)を選択したりする。しかし、俺の場合は自分は独学のほうが向いていると思ったし、学校や通信教育だとそれにカネを払っただけで満足してしまうのではないかという警戒心もあったから、あえて厳しい道を選んだ(それでも途中、自分の学習方法の正しさを確認したりするために一時的に学校に行った)。
その場合、もしもよく分からない問題が出てきたらどうするか?
正解は簡単で、「裁判所や法務局に電話をして聞く」である。
法務局というのは登記に関する民事行政事務を扱うところで、司法書士の仕事にとっては重要な役所である。
読者の多くは、司法書士の勉強で分からないことを裁判所や法務局に聞くなんて恐れ多いと思うかもしれない。しかし、実際に電話してみると分かるが、日本の裁判所や法務局というのはとても親切である。
考えてみれば、裁判制度を支えているのは我々国民の税金なのだから、納税者に親切にするのは当然の義務であるし、聞くのは彼らの業務に関わることなんだから遠慮は要らない。それに相手はプロだから、素人の俺にも分かるまできちんと説明してくれるし、答えも明快である。
もしも同じところにしょっちゅう電話するのが気が引けるのであれば、裁判所や法務局は日本中に何百もある。電話番号は裁判所や法務局のホームページに載っているから、「今日は北海道」「明日は沖縄」と気が向くままに電話したらいい。法律には地方の違いなどはない。
そういうわけで、裁判所や法務局は最高の「家庭教師」だ。
と言っても、勉強するのは平日だけ。年に1回しか試験はない。長い受験生活になると分かっていたから、休日返上はかえって効率を落とす原因だと考えた。