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3人の「ミニ永守」が“子分の資質”を競う 日本電産が進める〈脱ワンマン〉の後継者レース

3人の「ミニ永守」が“子分の資質”を競う 日本電産が進める〈脱ワンマン〉の後継者レース

丸の内コンフィデンシャル

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日本経済の中心地、東京・丸の内から“マル秘”財界情報をお届けする人気コラム「丸の内コンフィデンシャル」。月刊「文藝春秋」2023年8月号より一部を公開します。

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3人の「ミニ永守」

 日本電産から4月1日に社名変更したニデックに5人の副社長が就任した。そのうち1人が24年4月に社長に昇格する予定だ。それと同時に永守重信会長兼最高経営責任者(CEO)は会長とCEO職を辞し、代表権も手放す。創業者、永守氏のワンマン体制から、集団指導体制への転換を図っている。

永守重信氏 ©時事通信社

 今後の後継者レースで重要視されるのは「創業者イズムの習熟度」で、永守氏の理想は自分の意に沿う“子分”だ。永守氏は、自著『人生をひらく』(PHP研究所)で現社長の小部博志氏を「ツーカーの子分」と紹介。同氏が子分に求めるのは、「親分からの無理難題であっても、『わかりました』と親分を信じて実行する」ことである。

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 今回、副社長に就いた5人は全員中途入社で、プロパーの社員はひとりもいない。

 ニデックインスツルメンツ(旧・日本電産サンキョー)社長から副社長に就いた大塚俊之氏は、埼玉銀行(現・りそな銀行)出身。04年に日本電産リードに入社しており社歴が最も長い。

 専務執行役員だった北尾宜久氏(12年入社)と、ニデックドライブテクノロジー(旧・日本電産シンポ)会長の西本達也氏(09年入社)はいずれも三井住友銀行の出身。北尾氏はグループ会社統括を担当し、国内14社の経営に関わり、西本氏は21年に参入した工作機械事業の陣頭指揮を執る。

 専務執行役員だった小関敏彦氏(18年入社)は、東京大学の副学長を務めた研究者だ。永守氏が理事長の京都先端科学大学の副学長を務めていた。おなじく専務執行役員だった岸田光哉氏はソニー出身で、日本電産への入社は22年1月と、5人のなかで社歴は一番短い。

 永守氏は社歴を重要視しており、社内では、大塚、北尾、西本の銀行出身者の3人に後継者レースは絞られたとみられている。またこの3人は、いずれも「ミニ永守」と呼ばれ、子分としての“資質”も兼ね備えているという。