7月14日、スタジオジブリの新作アニメーション映画「君たちはどう生きるか」が公開された。宮﨑駿監督による長編アニメの公開は、「風立ちぬ」以来10年ぶりのこと。

 宮﨑駿監督の才能をいち早く見出したのが、徳間書店社長の徳間康快氏(とくま・やすよし/2000年没、享年78)だった。出版、映画、音楽など幅広い事業を手掛け、スタジオジブリ設立に携わり自ら初代社長になるなど、常に一歩先をゆくメディア人だった徳間氏。映画「コクリコ坂から」(2011年、宮崎吾朗監督)に登場するキャラクター・徳丸理事長のモデルとなった人物でもある。

 晩年の3年間を親密に過ごしたスタジオジブリ・プロデューサーの鈴木敏夫氏(74)が、徳間氏について語ったインタビューを紹介する。(「文藝春秋」2017年7月号より、肩書きなどは掲載当時のまま)

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徳間社長の“秘書”のように

 晩年の3年間は、徳間社長の“秘書”のように会食に同席したりして、横にくっついていました。朝は新橋(当時)の徳間書店に顔を出して、それから小金井市のジブリへ行って仕事。夕方くらいに秘書から「ちょっと来てください」と呼ばれて、また徳間書店に行ってご機嫌伺いをして、ジブリにとんぼ返り。そんな生活でした。

 私は元々、徳間書店でアニメ雑誌の『アニメージュ』の編集長をやっていました。いち社員と社長ですから、最初は認識されていなかったはずです。ところが、私も立ち上げメンバーとなった子会社のジブリが、『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』などのヒット作を生むと、ジブリと両方で仕事をしてる社員がいるみたいだ、と次第に認識されるようになったようです。とにかく徳間社長とはウマが合いました。

鈴木敏夫氏 ©文藝春秋

徳間社長の“秘密の日記”

 世間的には豪放磊落(らいらく)なイメージがあるでしょうが、私の見た徳間社長は、ちょっと違っていました。

 いつも会食の席が終わった瞬間に、5センチ四方の小さなメモ帳を取り出して何かを書き込んでいるんです。あるとき「何を書いているんですか」と聞いたら、「いま聞いた話をまとめてるんだ」と。聞けば朝起きてから、そのメモを日記に書き写すのだそうです。