5、親の友達付き合いを把握しておく
母の友達は、母の住んでいた釧路から離れたところで暮らしていて、時々電話はしていたみたいなんですが、付き合いの長い友達にもがんになったことを話せなかったんですね。母はプライドが高く自分の弱いところを見せたくないタイプだったから。でも、姉が母の友達関係を把握していたおかげで、母の友達にお葬式の連絡をして、最後に会ってもらうことができました。
親世代の人が、それまで仲のよかった友達と急に疎遠になった時が、うつ病や認知症のサインだった、ということもあると聞きます。親の友達関係を把握しておくことで、そういうサインに気がつくこともできそうです。
母は同じ病気だった友達には、がんのことをいろいろ話していたそうです。家族にも心を閉ざしてハートがガッチガチの時に、子供にも言いにくい病気についての自分の不安を語れるのは「がん友」だけだったんですね。私も母ががんになって、がんの話をすることのむずかしさを痛感したんです。母の病気と母との関係で悶々としていて、こういう現状を誰かに話したい、アドバイスとか励ましがほしいのではなくって、解決しないってわかっているこの悩みをただただ聞いてほしかった。でも、友達に話すには重い話題だし、親戚に話してもうまく伝わらず、結局、有料の「電話リーディング」(電話で話してアドバイスをくれる有料のセラピー)で話を聞いてもらって、気持ちがスッキリしたことがあります。不安な気持ちって、話を聞いてもらうだけで救われるところが絶対あるから、親世代にも病気の家族がいる人にも、人とのコミュニケーションをあきらめないでほしいと思います。コミュニケーションできたほうが人生楽です!
自分がやってみてよかったこと、できなかったことも合わせて5つあげてみました。親の性格や関係性にもよると思いますが、私は、親ががんになったことがわかっただけで、自分でも驚くほど混乱して、想定外の衝撃を感じてしまいました。今回、母の看取りのことを『ありがとうって言えたなら』に描いたのは、病気についての知識の本はたくさんあるけど、家族が病気になった時の体験談や気持ちについて書かれた本が意外とみつからなかったからです。「母の死」を通して私が感じたたくさんのことが、少しでも誰かの役にたったらいいなあと思います。
―――
瀧波ユカリ
1980年北海道札幌市生まれ。漫画家。日本大学藝術学部写真学科卒業。著書に漫画『臨死!! 江古田ちゃん』全8巻、『あさはかな夢みし』全3巻、『モトカレ マニア』1巻(共に講談社)、エッセイ『はるまき日記 偏愛的育児エッセイ』(文春文庫)、 『女もたけなわ』『30と40のあいだ』(共に幻冬舎文庫)、『オヤジかるた 女子から贈る、飴と鞭。』(文藝春秋)など。