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親が死ぬまでにしたい5つのこと――瀧波ユカリ

『ありがとうって言えたなら』著者が看取りの体験から心構えを語る

2018/03/09
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3、ツールを同じにする

 うちでは兄妹でLINEグループを作って、母の状況を逐一共有していましたが、親との連絡にLINEが使えるとやっぱり便利。朝に「おはよう」、夜に「おやすみ」と、それだけでも子供は親の生活リズムがわかるし、さみしい時には「さみしい」と4文字だけ入れて送ることもできるんだから、かなり有効なアイテムだと思います。母はガラケーのメールを使っていたのですが、親の世代だと「メール」はまだ「手紙」くらいの感覚でいる人も多いようで、気軽に自分の気持ちを短い文章にできないみたいです。親らしい、建前込みの文章を作るのに考えこんじゃう、というか。でも、LINEだったら単語でも成り立つから、口では言いにくいことも伝えやすいですよね。まあ、あんまり使いこなしちゃうと、しょっちゅう親からLINEが来て、圧をうけて困っちゃったりするかもですが(笑)。

 スマホはなかなかハードルが高くて、という方にはタブレットでの使用がオススメです。私の夫は子供の写真を撮ったら、夫の実家のiPadに転送するように設定して、その写真に夫の親が簡単なコメント、「かわいいね」とか、を音声入力できるようにしたんですね。設定は私たちがしなくちゃなので多少の手間はかかりますが、そんな風に楽しい上にやってみたら簡単、ってことがわかってもらえると、なかなか本音を言ってくれない親の「自分の気持ちを伝える技術」がきっと向上すると思います。

出典:『ありがとうって言えたなら』(瀧波ユカリ 著)

4、生活スタイルのアドバイスをする

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 親の年齢と共に起こる「新しく決めないといけないこと」についてのアドバイスは、子供のほうから積極的にしていくのがよいと思います。たとえば実家のリフォーム、自動車や家の維持について、食生活(自炊から宅配に切り替えるなど)について。元気なうちから「何かあった時」を想定して相談することを嫌がる親もいますが、家事を担っている母親は日常が快適になることがわかると歓迎してくれたりします。義母が骨折した時、夫は野菜中心のお弁当が届くサービスを導入して、家事問題の改革に成功しました。「今の生活をこう変えたほうが楽になるよ」というアドバイスや、実際に手を貸して変えてみせることで、いずれ来るかもしれない大きな変化にも、親子ともども対応できるようになっていくと思います。まずは食材の宅配や、お風呂など部分的なリフォームから進めていくとよいかもですね。

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