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2、親の機嫌がよくなるものを把握しておく

 母は入院するちょっと前から、孫に感化されてタブレットに触るようになりました。普段使っていたガラケーのメールは使いにくそうだったけれど、タブレットは指で触って使えるから、その使いやすさに驚いていましたね。You TubeでEXILEの動画を見るのがすごく楽しかったみたい。何年か前から「ATSUSHIが好き」って言いだしたのですが、ATSUSHIさんは背が高くて頼りがいがありそうな感じで、うちの父親もああいう雰囲気の人だったから、まぁズバリ母のタイプなんでしょうね(笑)。

©文藝春秋

 病気になると、具合が悪いせいで人は不機嫌になってしまうものです。母も歩き回れなくなってからは、調子が悪くイライラ全開な中でも、ATSUSHIさんの動画や昔飼っていたパグの画像を見ることで、気持ちが落ち着いたり、和んだりしていました。本を読んだりするにはある程度体力が必要なので、動画を流してなんとなく見ているというのも体に負担なく楽しめてよかったのかもしれません。

 そんな風に、長引く自宅療養や入院生活の日々の中で「心の避難場所」があるとないとでは、本人も周りの家族も大分状況が違うと思います。親の年齢によってはかなりハードルの高いことかもですが、まず「今、私、不機嫌だな」って親が自分の不機嫌を自覚する。その上で、「そういえば、自分は不機嫌な時にどら焼きを食べると、少し気分がマシになるな」とか、うちの母なら「ATSUSHIさんの動画を観て元気出そう」とか、自分で自分の機嫌を上げる方法がわかると、不機嫌にならざるを得ない闘病中でもずいぶん気が紛れます。

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 親が自分の機嫌を意識して上向きにさせる方法がわかっていると周りも助かるのですが、性格的にむずかしい場合も結構ありますよね。それなら、子供が親の趣味や好きなものを少しでも知っておく。本人も周りも機嫌UP法を全くわかっていないと、病気になった人も周りにあたるしかなくなっちゃうんですよね。それはそれで、あたられる側はもちろん辛いし、実はあたってしまう側も辛いと思うので……。

 普段日常的に楽しんでいることが、病気になると改めて支えになったりします。メンタル面で救いになる。山登りとか、アクティブな趣味だとなかなか難しいけれど、室内で楽しめる何か好きなことを見つけておけるといいなあと思います。親が日常的にどんなものを楽しんでいるのか知っていれば、共通の話題になるし、会話のきっかけにもなりますよ。

出典:『ありがとうって言えたなら』(瀧波ユカリ 著)