文春オンラインをご覧のみなさま初めまして、ライターの吉川ばんびと申します。
少し前に、若い女性たちの間で「おじさんLINE」という言葉が流行っていたのをご存知でしょうか。ざっくりと説明すると「おじさんから若い女性に送られてくるLINE」のことなのですが、これだけではどうして流行るのかがわかりませんよね。そこでまずは、「おじさんLINE」の例文をご紹介します。
これは、以前に知人のおじさんから私に送られてきたLINEです。見ているだけで胃もたれのするしんどい内容ですよね。
「私もこういう経験がある!」と大反響
私は現在、26歳。この年齢になればこういった「しんどいオッサン」からの連絡の数は減るものの、全くなくなったわけではありません。職場の上司などからこうした「どうでもいい内容」のLINEが2、3日に一度のペースで送られてくることに以前より嫌気がさしていた私は、実際に届いた「おじさんLINE」の文面と、パターン別の返信の仕方や対策をまとめて昨年11月に公開しました。
するとこれが思いもよらぬ反響を呼び、閲覧数は2日間で16万PVにもなりました。このブログをテレビで紹介していただいたこともあり、「私もこういう経験がある!」「まさにこんな文章でしつこく連絡がくる!」という女性の声がTwitterやコメント欄で続々と上がり始めたのです。これまで口をつぐんでいただけで、たくさんの女性たちがこのような体験をしていたことがわかりました(ごく少数、おばさんからしつこく連絡がきて困っている、という男性の声もありました)。
「セクハラ」が生んだ、おじさんと若い女性の「溝」
このとき私は、「おじさんLINE」の裏で深刻な「社会問題」が生まれていると感じました。
多くの「おじさん」と「若い女性」が、うまくコミュニケーションを取れなくなっているのではないか、と思ったのです。
「セクハラ」という言葉は、今や知らない人がいないほど、社会に広く知れ渡っています。これにより、(多くの場合)女性たちは自分自身を「セクハラを受けるかもしれない存在である」
と意識し、男性たちは少なからず「自身の行動がセクハラだと指摘される可能性がある」と認識していると思うのです。このように仮定すると、普通のおじさんたちは若い女性に対して、どのように振る舞うでしょうか。
一般的な感性を持っていれば、「連絡の回数や接触を必要最低限にとどめ、セクハラだと誤解をされかねない言動はしない」よう注意するのが自然な行動です。
以前はおじさんと若い女性の間で普通に行われていたコミュニケーションが、「セクハラだと思われてはいけないから」という理由で、行われなくなってしまったのです。これは「セクハラ」という社会問題が生んだ、おじさんと若い女性との間にある「溝」だと思っています。たとえばしつこい誘いなどの連絡を何度も送ってくるような少数の「しんどいオッサン」の存在により、「普通のおじさん」ですらも、女性に気軽に連絡を取ることが難しくなっているのです。