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売春で妊娠したと偽り、「トータル2000万円」を稼ぐ…立ちんぼに群がる男たちが知らない「頂き女子」の闇

source : 提携メディア

genre : ライフ, 社会

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――3年払い続けてくれるのってどんな人?

「最初は出会いカフェの客。48歳独身で、仕事はSE。ハゲ散らかして、見た目はキモいけど、私と会うときはオシャレしてくるからカワイイなって」

――セックスはするの?

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「最初は1回したけど、もうしてない。確か、性被害に遭ったことがあるからセックスが好きじゃないとか、出会った当初に言った気がするなぁ。もちろんウソだけど、向こうが私のことを好きだから、月に1回、会えばカラダの関係ナシでもお金をくれる。今月もふたりで『ココイチ(大手カレーライスチェーン・CoCo壱番屋)』でカレー食っただけで15万もらって帰った。でもクリスマスやバレンタインとか記念日には必ず会うよ。優しいでしょ」

なぜ48歳・SEの男はセックスなしで貢ぐのか

「もう詐欺はやめなよ」

琴音との会話が終わったところで正したが、会話中は詐欺を咎めることはしなかった。批判もあろうが、琴音の告白をそのまま受け止めることが、僕が知りたい錬金術を紐解くことに他ならないからだ。

そして少し日を空けて、なぜ48歳・SEの男はセックスなしで貢ぐのかと、またいつもの喫茶店で琴音と議論した。要は彼女も妻もいない、社会のなかではもちろん、キャバクラでも相手にされない、でもカネはある男だからである。

そこにきて、出会いは売春であっても琴音は相手にしてくれる。売春婦と買春客。上中下のカーストの、琴音も男も一般的には下に格付けされ、下は下同士で対人関係を構築するしか道はない。

「誰かのためにお金を使って頑張ってる自分が好き」

むろん、下同士であっても力関係は生じる。いや、舞台女優でもある琴音は上や中でも生きられる面があり、相手より優位に立ち回るために下まで降りてきているだけなのかもしれない。これが僕の見解である。

印象に残っているのは、琴音も僕に同調し、その上でさらに生々しく分析してみせたことだ。

「ホス狂いと一緒でさぁ、誰かのためにお金を使って頑張ってる自分が好きなんだよ。貢いでいるだけとわかっていても、私にお金を使うため切り詰めて生活してる自分が好きなんだよ。アイドルに走る男も多いよね。でも、大衆のなかのひとりじゃなくて、自分だけが独占したいんだと思う。だから、お金はもらうし、セックスもしないけど、できるかぎり疑似恋愛してあげてる」

男をホス狂いだった過去の自分に重ね、偽りの愛情を注ぐという琴音の姿は、担当との蜜月時代そのものに見えた。

高木 瑞穂(たかぎ・みずほ)
ノンフィクションライター
1976年生まれ。月刊誌編集長、週刊誌記者などを経てフリーに。主に社会・風俗の犯罪事件を取材・執筆。著書に『売春島「最後の桃源郷」渡鹿野島ルポ』『東日本大震災 東京電力「黒い賠償」の真実』『覚醒剤アンダーグラウンド「日本の覚醒剤流通の全てを知り尽くした男」』(彩図社)、『裏オプ JKビジネスを天国と呼ぶ“女子高生”12人の生告白』(大洋図書)、『日影のこえ』(共著、鉄人社)ほか。
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