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根底にある仏教の教え

──『怪談和尚の京都怪奇譚』シリーズ では、第4弾「幽冥の門」、第5弾「宿縁の道」、第6弾「妖幻の間」とサブタイトルがついています。それぞれの意味について教えてください。

三木 お経には、仏教を広めるための方法が書かれています。全部で4段階あり、まずは「開」。入門者が入りやすいように、門を開きなさい、ということです。つぎに「示」。お経にはこういうことが書いてありますよ、と示すわけです。

 さらに、「悟」。お経の文章を読んで、理解させなさい、ということです。最後に、「入」。お経を理解しても、行動に移さないと意味がない。仏法の道に導きなさい、ということです。

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 これが「開示悟入」と言って、法華経に書いてあります。つまり、「幽冥の門」から仏門に入り、「宿縁の道」で経文を示し、「妖幻の間」で内容を理解する。次回作は、いよいよ実践になるわけです。ということは、『京都怪奇譚』シリーズも第7弾で終わってしまうかもしれない(笑)。

 

──怪談話と仏教説法をどのように組み合わせ、怪談説法を創作されているのでしょうか。

三木 怪談話の中で、「これは仏教の教えのここだな」というのはすぐに分かるんです。難しいのは、お経の部分をいかに分かりやすく話すか。そこにいちばん時間がかかる。例え話を出すと理解しやすいんですが、そうすると、怪談が例え話の例え話になってしまう。いかに説法の部分を分かりやすくするか、そこが怪談説法の難しいところですね。

──怪談説法を文章で書くのと、YouTubeの「三木大雲チャンネル」で喋るのでは、違いはありますか。

三木 まず、「三木大雲チャンネル」では、喋る時間をそろえる必要があります。あと、説法の部分が長くなると、途中で止めてしまう人が多いんですね。ですので、耳で聴いて飽きないように、説法の部分は一言、二言で済ますようにしています。もっと細かいことが知りたい人は、本を読んでもらう。そういう棲み分けにしています。メディアによって伝え方も変わりますね。

──「三木大雲チャンネル」でいちばん反響があった怪談は何ですか?

三木 そうですね……。クマのぬいぐるみが恩返しをする「クマのクーさん」は、私自身好きな怪談で、反響もたくさんありました。怖さで言うと、アルバイトで彼女役を演じた女子大生が呪いをかけられる「レンタル彼女」と、その続編にあたる「鏡」でしょうか。

 再生回数が多いのは「お題目さま」です。一生に一度、願い事がかなうという神様を私が訪ね、「生まれ育った京都市内のお寺の住職にして欲しい」と頼み、それで蓮久寺を継ぐことになる、という話です。