子どものいない女性のほうが幸福度が高い現実
子どもがいない人にはさまざまな理由がある。ゆえに「子どもがいない人」を十把一絡げに語ることはできない。私の場合は、身体的理由でも、環境的理由でもなく、自分の希望で子どもを持たなかった。
「子どもがいなくて淋しいでしょう」
と言われても、最初からいないものに、そうした感情は湧かない。愛情を注いだものがいなくなったときの淋しさはよくわかる。愛猫を亡くしたときは、一年間、まるで影のようだと友人に言われていた。
「子どもがいたら、もっと素敵になったのに」
と、キャスターをしていたころに、男性ディレクターによく言われたが、余計なお世話である。皆、同じ価値観でないと気が済まない人がいるのだ。
子どもがいない人が増えてきて、こうした不躾な物言いは減ってきた。
子どもがいれば淋しくないのか、子どもがいれば素敵なのか、と言えば、決してそんなことはない。日本では、子どもの「いる」女性より、「いない」女性のほうが「幸福度が高い」というデータがある(「子どものいる女性のほうが、幸福度が低い」少子化が加速するシンプルな理由/PRESIDENT Online/佐藤一磨、拓殖大学政経学部准教授)。
この記事は、子どもを持つこと自体は女性の幸福度を高めるが、「子どもを持つことに伴うさまざまな変化が女性の幸福度を低下させる」と分析している。子育てにかかる金銭、子どもを持つことによる夫婦関係の変化、女性への家事・育児負担の高さなどが、女性の幸福度を下げているというのだ。また、子どもを持つことによって夫婦関係の満足度も低下するのだという。
子どもを持ちたい人も、持ちたくない人も、生きやすい社会に
少し前に『母親になって後悔してる』(オルナ・ドーナト著、鹿田昌美訳)という世界的ベストセラーが、日本でも反響を呼んだ。〈子どもを愛している。それでも母でない人生を想う〉と、本の帯に書かれている。息子を心から愛している知人は、その気持ちと何ら矛盾することなく、ずっとお母さんをやめたかった、と語った。お母さんでいることは、あまりにも大変で多くのことが求められ、あまりにも自分の人生を生きられないからだと。
こうして見てくると、子どもを持ちたくないと考える女性が増えているのは、ごく自然なことだと感じられる。
昔もいまも女性にとって、「子どもがいれば幸せ」ではない。自分はどうしたいのか、を自分に問い、自分で選択しなければならない。そして子どもを持ちたい人も、持ちたくない人も、生きやすい社会でなければならない。
ちなみに、先に紹介した著者(佐藤一磨、拓殖大学政経学部准教授)は別の記事で、「配偶状態別の幸福度の平均値」を紹介していた。それによると、幸福度の平均値は、既婚女性→既婚男性→独身女性→独身男性の順に下がっていくのだという(独身男性の幸福度は生涯にわたって低迷…不安定な経済力は結婚以前の段階からハンデになるという現実/PRESIDENT Online)。つまり、最も幸福度が高いのは既婚女性で、最も幸福度が低いのは独身男性なのだ。男女ともに、結婚したほうが幸福度が高くなるという。
あくまで平均値なので、結婚しても幸福でない人はいる。だがこのデータを見ると、「結婚=幸せ」の図式は現在も有効だということだろう。私自身は疑問を呈したくなるが、結婚は多くの人を幸せにすると思われているらしい。
だからこそ、結婚に多くの人がこだわるのだろう。そして、そういう現実があるから、私はこの本を書いているわけでもある。