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 ある週末、私がペルーでお世話になっているドイツ人教授夫妻が見学に来た。隊員であるペルー人学生達の指導教員でもある。発掘現場を案内して一通り説明し、翌日は私の運転で奥地の遺跡を見に行くことになった。まずは経路の安全情報を、このネペーニャの町で一番信頼している友人ペペに尋ねる。すると、ちょっと気をつけたほうがいいよと、気になることを言い始めた。

 奥地へ向かう際に必ず通るモロという町があるのだが、その手前にある橋のたもとに、強盗が出没しているらしい。大切な客人を連れて行くのにそれは大変だと思い詳しい話を聞いた。賊は土木作業員の恰好をして、通行する車に乗せてってくれとお願いし、頃合いを見計らって犯行に及ぶとのこと。ペルーの一般土木作業員は通常オレンジ色の安全ベストを身にまとい、黄色いヘルメットを被っている。ちなみにヘルメットは職種によって色分けされるので、現場監督や技師は白、学生は青などと決まっている。

 さて、仮にこの強盗の噂が本当だとして、犯行現場から20キロ近く離れた町の一市民の耳に入っている情報である。しかも賊の恰好が恰好だけに目立つことこのうえない。当然警察も知っているはずだし、だとしたら既に逮捕しているか、犯罪防止のために現場近くに張り込んでいるはずだ、などとは微塵も考えなかったので、私は既にペルー生活に適応していたのだろう。

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事故を起こした時の警察の対応に驚き

 発掘のある平日は6時過ぎに慌ただしい朝食をとるのだが、週末なので朝をゆったり過ごす。

 愛車のボンネットを開けて、普段より丁寧に各所を点検し、下回りも確認する。走行距離40万キロ近いジープ社のチェロキーは、17年落ちの中古で、新聞の「売ります・買います」欄から所有者に連絡をとって購入した。本日もエンジン快調である。リマ市の教習所に通い、驚くべき公道実習を経て免許を取ったのだが、すぐに事故で中破してフレームが歪んでいる。

 そのせいか車内はかなり騒々しい。ああそういえば事故の時に保険屋と警察を呼んだら、保険屋は素晴らしい対応で驚かせてくれたが、警察には逆の意味で驚かされた。事故車は一時的に警察が保管するのだが、戻ってきたときには埋め込みスピーカーやら何やらが蒸発していた。

 盗難場所が場所なので、そして推定犯人が犯人なので盗難保険を使うわけにもいかず、仕方ないので酒席のネタにして気を晴らした。

黄色いヘルメットをかぶった男

 愛車にドイツ人教授夫妻とペルー人学生2名を詰め込んで、私が運転する。出発したのは10時近くだったように思う。その時間だと気温は既に30度近い。まずはネペーニャとモロの中間地点にある岩山の麓に車を止め、岩山を登って紀元前3、4世紀頃の城塞遺跡を教授夫妻に案内する。皆けっこうな汗をかく。少しお腹も空いてきた。早くモロに行ってランチにしたいものである。件の橋があるあたりは河谷の中流部であり、熱気がこもって一層暑かった。