しかし新式の竃(かまど)が登場すると、状況は一変する。
「目下、春採の火葬場にて使用する竃は昨冬、新たになりたる、いわゆる小松式なるものにて、一度竃中に棺を納め、火を放てば、再び取り出す余地なく、人を焼く物凄き煙、わずかに白煙を出すに過ぎざる改良竃とて、尋常(じんじょう)一様の手段にては人肉を取り出すの機会あるべきはずなき」(「北海タイムス」明治44年6月1日)
この「小松式」のような「改良竃」が普及していったことで、遺体損壊の機会が自然に失われていったものと思われる。
中山 茂大(なかやま・しげお)
ノンフィクション作家・人力社代表
明治初期から戦中戦後にかけて、約70年間の地方紙を通読、市町村史・郷土史・各地の民話なども参照し、ヒグマ事件を抽出・データベース化している。主な著書に『神々の復讐 人喰いヒグマたちの北海道開拓史』(講談社)など。
ノンフィクション作家・人力社代表
明治初期から戦中戦後にかけて、約70年間の地方紙を通読、市町村史・郷土史・各地の民話なども参照し、ヒグマ事件を抽出・データベース化している。主な著書に『神々の復讐 人喰いヒグマたちの北海道開拓史』(講談社)など。