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なぜ母ちゃんは俺に覚醒剤を打ったのか…「小学校の尿検査が怖くて仕方なかった」という非行少年の想い

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genre : ニュース, 社会

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その後救急車を呼んで運ばれたけど、そのまま亡くなってしまった。

お葬式をして火葬場にも行ったはずだけど、それ以降のお兄ちゃんに関することは記憶がないといいます。

これは、面前DVの中でも最悪のケースです。

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死ぬのを目撃してしまったこの子の心の傷は、計り知れません。

あまりにも強い恐怖体験に、解離が起こってしまっているのかもしれません。そしてそれが何か「触れてはいけないこと」だと、幼いながら分かり、ずっと口を閉ざしていたのです。

家族の中だけで封印してしまった

ここから負の連鎖が始まります。

このことをきっかけに、お母さんとお祖父さんの仲が悪くなったそうです。

それもそのはず、お母さんからすれば、息子を殺された相手。絶対に許すことなどできないはずですが、その相手がたった一人の実の父親。そのお父さんを殺人犯にすることもできず、家族の中だけで封印してしまったのです。

それでも、お母さんとお祖父さんが喧嘩をすると、「あのことを言うよ!」という脅し文句が家の中で飛び交う。「あのこと」というのが、兄の死にまつわることなのだということも、ショウ君は薄々分かっていたのでした。

また、この子は、実際にお兄ちゃんが目の前で殴り殺されているのを見ているわけです。

その後は、少しでも行儀が悪いことをしたら自分も同じことになるかもしれないという強い恐怖心に襲われ、家にいるのが怖くてたまらなかったと言います。

虐待は、親が「今日で終わり、もうしない」など終息宣言されることはまずありません。祖父が、兄のことがあって反省して心の中で「もう折檻はしない」と誓っていたとしても、子どもには分からないので、その後もずっと恐怖の中で生活することになります。

母親が覚醒剤を打つ際に血管を探す役

お母さんが覚醒剤に走るようになったのも、この頃からだそうです。

わが子を失ったショックからなのか、その辛い現実――自分の子どもが親から殺されるという事実をごまかさずにはいられなかったのでしょう。