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しずちゃん そうですね、練習、練習、ってとにかくそればっかりで。漫才の仕事も「休憩」やと思ってました。ボクシング以外の仕事は休み時間っていう感じでした。

 逆に言うと、そのぐらいしないと全くの素人が3年でオリンピックを目指すっていうのはできないんですよ。やっぱり普通に考えたら無謀なことなので、本当にめちゃくちゃやらなあかんってなって。休める日がなく、毎日トレーニングをしていました。

「山ちゃんに歩み寄るきっかけになった」

――この時期に梅津さんから「欲を出せ」と言われていたんですよね。オリンピック出場という高い目標を達成するには貪欲にならないといけない、という。それってしずちゃんの中にはもともとなかった感覚だと思うんですが、実際に欲は出てきたんでしょうか?

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しずちゃん 出そうとしてましたね。自分の性格とか人格はなかなか変わるもんじゃないから、実際どこまで変われたのかはわかんないけど、性格も変えろっていう感じだったので。「貪欲になるぞ」とは思っていました。

 「ボクシングが『山ちゃんに歩み寄るきっかけ』になった」 ©杉山秀樹/文藝春秋

――ボクシングをやめてからも、この経験がお笑いに生かされたり、山里さんとの関係が少しずつ良くなったり、そういう意味での影響もあったそうですね。

しずちゃん そうですね。山ちゃんとの関係で言うと、コンビを組んだ当初、山ちゃんがストイックだったので「私にあれをやれ、これをやれ」って強要してくるのがすごく嫌だったんです。やらなかったら怒るし。

 でも、私はボクシングという厳しい世界に飛び込んだことで「本気で取り組むならこれだけやらなあかんねんな」っていうのを知って、山ちゃんが言ってた意味がわかったんです。

 それが私から山ちゃんに歩み寄るきっかけになったし、向こうもボクシングをやる私を見て「本当にがんばってるんだな」って思ってくれたと思うんですよね。そういうことでコンビの関係性は変わってきました。

――その後、お二人が単独ライブをやったときに、山里さんがアドリブでずっとしゃべり続けていたことに驚いた、と書かれていたのも面白かったです。ボクシングをやっていたしずちゃんから見てもスタミナがすごかった、っていう。