「万引きに年齢は関係ない」
――フリマサイトに出品するために万引きを。
伊東 換金目的で特に被害に遭うのは、女性向けの化粧品や、若者に人気なトレーディングカードですね。どれも大きさのわりに高額ですから。お菓子のおまけを積極的に盗む人間もいます。
あとそれが商売になっている連中もいて、それが海外から来た窃盗団です。総額10万円以上する医薬品が一気に盗まれたこともありました。
――万引きといえば、どちらかといえば「衝動的に行うもの」という印象がありました。
伊東 多くの犯人は効率を気にしてますね。どうせ盗むなら高く売れるものと、わざわざ高額商品の入ったウィンドケースの鍵まで開ける輩もいます。
――万引き犯が多い世代はあるのでしょうか?
伊東 年齢はとくに関係ありませんが、若い世代が「昔より罪悪感を抱かない」印象にあります。捕まっても悪びれない子も多いし、女の子だと足や胸なんかを強調しながら「許してほしい」という態度を見せる子もいる。昔ほど万引きを犯罪とは思っていないのではないでしょうか。
「リアル万引き家族」も…
――万引きの現場で、最近ほかに変化を感じましたか?
伊東 以前から指摘されている「高齢者の増加」は間違いありません。再犯率が高く、開き直るケースが多いのが特徴です。いざ捕まえると、いきなり耳が聴こえないふりをしたり、意識を失ったふりをすることもあります。念のため病院に連れていっても、特に異常がないケースがほとんどですけどね。
あとは兄弟や姉妹、家族ぐるみのケースも目立ちます。たとえば去年捕まえたなかで特に被害額が大きかったのは、とある地方の三姉妹の犯行でした。“レシートの長さ3枚分”にもなるほど大量の商品を万引きしていて、のちに警察が調べたところによると、案の定フリマサイトで売るためでしたね。
ほかにも20代の女性と10歳の弟が協力して、万引きをしたり……。盗んだものはカー用品や洋服など、すべて換金目的でした。姉は執行猶予中で、反省の色が全く見えない。弟は弟のほうで「俺、今日児相(児童相談所)行き?」と言いましたからね。もう万引きが日常化してしまっているんです。そういう姿を見ると、こちらも胸が痛みます。
――今後、万引きは増えるのでしょうか?
伊東 景気が悪くなって、誰もが明日が見えない状況です。そうなると万引きが増えるのは確実です。あと最近は「事後強盗」も増えつつあります。最初は万引きのつもりでも、捕まらないために暴行を行い、後から強盗扱いになってしまうケースです。これは省人化が進むコンビニで増えている印象ですね。(続きを読む)