検挙件数が減っているのに、実際は「万引き」の勢いは衰えるどころか、増加しつつある理由とは? これまで6000人以上の万引き犯と対峙した万引きGメン・伊東ゆう氏インタビュー第2弾をお届けする。(全2回の2回目/前編を読む)
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「万引き」の検挙件数が減っているカラクリ
――2021年の『刑法犯に関する統計資料』(警察庁)を開くと、2012年の万引き犯の検挙件数が9万7841件に対し、2021年には6万3493件と3.5割もの減少が見られます。しかし、伊東さんは「万引きの増加」を肌感覚で感じられているわけですよね?
伊東ゆう(以下、伊東) 2010年に警察庁の旗振りによって、万引きの「全件通報」が始まりました。だから、数字上は減っているように見えるんです。
――万引き犯を見かけたら、即通報しなければいけないという制度ですよね。
伊東 はい。でも全件通報は、お店側にとって負担なんですよ。制度開始前であれば1日に13人の万引き犯を捕まえたこともありますが、今は2件が精一杯です。
警察を呼ぶと、防犯カメラ映像のチェックや事情聴取などで、めちゃくちゃ時間がかかってしまうんですよ。少なくとも1件につき3時間。その間、従業員も仕事ができないわけですから、お店にとっては万引き犯を見つけても通報しないほうが得なケースもあるんです。また、なかには勘違いを恐れて、なかなか万引き犯に声をかけられないお店もあります。しかし、僕は声かけは積極的にすべきだと思います。
――「声かけ」ですか。
伊東 長年の経験からわかったことですが、犯罪予防には声かけが非常に役立つんです。大切なのは「積極的な声かけ」と「具体的な声かけ」の2つを実践すること。前者はたとえば「いらっしゃいませ」や「ありがとうございました」といった挨拶に近いもの。後者は、たとえば「かごをお使いください」といったものです。
また、高齢者のなかには「さびしい」から万引きをする人もたくさんいるんですよ。スーパーしか行くところがない、かまってもらいたい、心配してもらいたいという欲求から万引きを犯す人もいます。そうした高齢者の万引きを予防するためにも、声かけは重要です。