eスポーツプレイヤーは全世界で1億人、ファンの数は5億人と言われるほどで、野球やバスケットボールの観客が1000万人台なことを考えてもその人気ぶりが窺える。
韓国のeスポーツ市場は2021年時点で1000億円を超えており(1兆48億ウォン、韓国コンテンツ振興院)、これは米国・中国に続く規模だ。eスポーツチームは47チームあり、さまざまな種目で500人近くのプロゲーマーが鎬を削っている。
韓国では2000年に「韓国eスポーツ協会」が設立され、eスポーツという名称もこの時から使われるようになった。これだけeスポーツが発展した背景には、1997年の経済危機がある。
それまでの重工業や製造業から産業構造の転換を余儀なくされた韓国はITへと舵を切った。LANなどのインフラが急速に整い、街のあちこちに、手頃な価格でPCが使える日本でいうネットカフェ「PC房(部屋)」が登場し、小学生の子供たちの間でもオンラインゲームはあっという間に人気になった。ゲーム業界はマーケティングもかねて大会を開催するようになり、それがeスポーツの広がりにつながったといわれる。
韓国でも高齢者は「座って、楽しんでいるだけっていう感じ」
ただ、そんなeスポーツ大国の韓国でも世代によってeスポーツを見る視線は微妙に異なる。幼い頃からゲームに親しんできた韓国のZ世代は日常のスポーツとして楽しんでいるが、今でもその親世代からは冷ややかな視線が混じる。60歳の知り合いは「息子とどれだけゲームのことで言い争いになったか分からない」と苦笑する。
「PC房に入り浸るよりはと思って仕方なくパソコンも買い与えて、ゲームをする時間を決めたりするのにするのにすごく苦労しました。eスポーツってプロゲーマーがゲームで闘うんでしょ。スポーツっていわれてもねえ。座って、楽しんでいるだけっていう感じがして、ピンとこなくて」
逆にその知り合いの息子(32歳・会社員)は、「eスポーツは青春」と話す。
「もともとは日本の『ファイナルファンタジー』が好きで、マニュアルを読むために日本語も独学で勉強しました。eスポーツは壮大ですよ。小学生の時から大会もずいぶんあったから、中学生になってからはソウル市内にある会場によく観にいきました。野外スタジアムを借り切って大がかりにやったのもありましたね。今でも昔の友だちと会うと、そのときの話で盛り上がります。
eスポーツは、歴としたスポーツです。フィジカル、メンタルの強さはもちろん、なにより大局観が求められる。チームワークも大事ですから、野球やサッカーと同じです。まあ実際にやったことも、あまり観たこともない50代以降にはそういう感覚はないかもしれませんけどね」