eスポーツプレイヤーは韓国の小・中学生のあこがれの的で、ここ数年はなりたい職業トップ5に必ず入っている。eスポーツチームが運営するeスポーツ塾や、チームには練習生制度もある。まるでK-POPだ。
ただ、習い事としてのeスポーツはまだまだメジャーとは言い難い。中学生と小学校低学年の息子を持つ40代半ばの知り合いに訊くと、「周りでeスポーツ塾に通っている子供は見たことがない」という。
「他の勉強の塾だけでも時間が相当とられるし、出費もそれだけかかるから、プロになれるような才能があるって確信できなければ、せがまれても通わせないんじゃないかなあ。勉強は放棄しましたってとられる可能性もあるから、周りにも言いにくいと思う」
自分の子供がプロゲーマーになりたいと言ったらどう対応するかと訊くと、
「フェイカーみたいな才能がどこにでもいるわけじゃないから、まずは手堅く勉強させるしかない」
そう笑っていた。
フェイカーは高校を中退してプロゲーマーになっているが、父親がいち早くその才能を認め、プロゲーマーの道に進ませたと伝えられている。
年俸は上がっているのに、実は儲かっていない?
Z世代に絶大な人気を誇り選手の年俸も高騰と景気がよさそうに見えるeスポーツだが、実は盤石なビジネスモデルがなく、ここ2~3年は人気チームも赤字を出しており、ターニングポイントを迎えている。問題はふたつあると、eスポーツに詳しい記者は言う。
「1つは収入のメインであるスポンサー契約の問題です。まだ冷たい視線を向ける大人も多いのでスポンサーも若年層向けの企業がメイン。それでサッカーのように全体の規模が大きくなりづらい。
もう1つが、ゲームはゲーム会社のものなので、グッズの商品化に制限があって収益源が確保できないことです。
それでも最近はZ世代へアプローチするために銀行などの“お固い”企業がイメージ戦略として後援するケースが増えてきています。eスポーツを普段見ない人の目にも触れるアジア競技大会で大きな話題になれば、また違った局面が作れるのではないかと期待もあります」
さらに赤字の原因のひとつが高騰する選手の年俸だともいう。フェイカーは特別だとしても、世界トップレベルの選手の年俸はここ2年で70%ほどアップしたと言われ、1億円を超えるプレイヤーも複数いる。しかし期待ほどには収益が伸びておらず、サラリーキャップ制を導入しようという声もでている。
またフェイカーが10年現役で一線にいることからもわかるように、第一世代を超えるスターがなかなか出てこないジレンマもある。最近ではプロゲーマーの育成に力を入れる組織も増え、フェイカーが所属する「T1」傘下のアカデミーは3月に、韓国のトップ3と言われる名門・延世大学のスポーツ応用産業学科と手を組み、インターンシップ制度を作っている。大学生が現場で実習したりできるよう業務提携をしたことが話題になった。
また、ベースキャンプと称したPC房の拡大版を作り、そこに足を運ぶプレイヤーから目を引く人材をスカウトし、育成しようという動きも出はじめている。
政府も法整備などでバックアップを始めており、K-POPの次は「K-eスポーツ」が世界を席巻する可能性は十分にある。