2022年3月5日、埼玉県本庄市にある借家の床下から、柿本歩夢くん(当時5)の遺体が発見された事件。歩夢くんは、同居していた3人の大人から壮絶な虐待を受けた末に命を落とし、その亡骸を冷たい土中に埋められていた。
事件を巡っては、歩夢くんの実母の柿本知香(当時30)、借家の借主である無職の内縁夫婦――丹羽洋樹(当時34)と石井陽子(当時54)らが逮捕され、傷害致死、死体遺棄などの罪に問われている。3被告のうち、柿本と丹羽の裁判員裁判が、8月28日からさいたま地裁で始まる。
5歳児を虐待死させた「家族」の奇妙な実態
司法担当記者が振り返る。
「起訴状などによれば、3人は共謀して2022年1月18日、借家1階の和室で、知香と丹羽が歩夢くんを畳の上に何度も投げ倒すなどの暴行を加え、死亡させていました。死因は後頭部強打による脳幹損傷。翌日頃、床下に穴を掘って遺体を埋めたとされます。詐欺など別の罪でも起訴されている石井は、事件の首謀者だった可能性もあり、期日は未定ですが、2人とは別に裁判が行われることになります」
柿本母子が石井と丹羽の住む借家に転がり込んだのは、2021年1月。
「知香はSNSで歩夢くんの父親と知り合ったと聞いています。地元の大阪から本庄に出てきて結婚したのですが、やがて彼のDVやギャンブル癖などで夫婦仲が悪化し、歩夢くんが3歳くらいの時に別居。歩夢くんを連れてしばらく友人のシングルマザーの家に身を寄せていました。そのシングルマザーの知人だったのが『中村葵』と名乗っていた石井陽子だったんです。そのうち『あっちでお世話になる』と言って、石井らの住む家に移り住んだそうです」(知香の知人)
知香は、保育園の保護者の間で、スリムな美人として知られていた。だが、現場の借家に移ってからは、化粧もせず、髪もボサボサで、見るからにみすぼらしくなっていったという。実は、歩夢くんに対する虐待は、石井らと同居した直後から始まっていた。